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第40話
残酷スタイルについて話し出したアゼル曰く、だ。
水着は見えそうで見えない素敵な衣服、と聞いて、海水浴の許可を出したのに、話が違うということらしい。
そんなことを言われてもな……。
俺の裸なんて、魔界で一番お前が見ていると思うぞ。
水着どころか全裸だって余すところなく見れる立場なのに、どうしてパーカーを親の仇のように睨んでいるのか。
んん……本人的には納得行かないが、アゼルが見たいなら一肌脱ごう。
俺は日焼けすると肌が赤くなるだけで焼けないタイプなので、ひたすら痛く、治癒魔法をかけてもらうのも悪いからパーカーを着ているだけだしな。
ブスくれるアゼルにそう言って脱ごうとすると、ギッチリパーカーのファスナーを上まで上げられた。
てるてる坊主みたいになったじゃないか。
どうしてくれる。
二人で身を寄せあって寝そべりつつ、俺は微妙な顔になってしまった。
「アゼル、どうして俺はてるてる坊主姿にされたのだろう。ちょっと暑いぞ」
「闇、霧、渦巻け」
ブワッ
「涼しくなった、ありがとう。でもてるてる坊主は」「薄皮一枚まで余すところなく貧弱な人間はそれが海水浴のドレスコードだ!」
「水着全否定じゃないか……?」
魔王版・海水浴のすゝめ、その一。
『か弱い人間はてるてる坊主になるべし』
魔法で俺の近くの熱気を取り除いてくれるアゼルだが、甘くはない。
俺が如何にか弱いかを語られ、直射日光をなるべく浴びないようにこんこんとお説教をされてしまったのだった。
◇
ユリスの水魔法でウォータースライダー化している水の竜巻に乗り込み、リューオとタローが大笑いしながら回転しているのを浜辺から眺める。
三半規管がやられないのだろうか。
ガドの飛行やアゼルのスキップでグロッキーになる俺としては、二人のたくましさが夏の日差しより眩しい。
隣のアゼルは、リューオがうっかり手を離してタローが放り出されないかを、カタギとは思えない目付きで監視している。
うん、最強……最凶の監視員だ。
そもそもタローの水着に物理、魔法共に耐性バフを付与していたからな。
そんじょそこらの魔物なら傷つけられない。
んん……ちょっと課外授業をしよう。
アディ先生、夏期講習ということで。
生き物にバフをつけると、一、二時間程度で消えてしまう。物だと半日程度もつので、そういうアレなのだ。
つまりスキルで耐性持ちのアゼルやリューオは、死ぬまで有効だったり。
割合で言うと、ピンからキリまであるが、リューオは三割程度ダメージ量を削れる。
これは破格だ。何もしなくても三割減。
んんと、アゼルは先生でも分からない。
なんと言っても怪我が秒で回復するから、比較できないのだ。
「アゼル、お前の耐性スキルだとどの程度ダメージ量を減らせるんだ?」
「あ? それを言うとダメ計算されてクソ勇者に攻略されるだろうが。大体半減だ」
「ありがとう」
秘密にしているのに、なんの躊躇もなくしれっと教えてくれた。
アゼルはやっぱり優しい。これは秘密にしておこう。
ということで大体半減だそうだ。
知ってたがチートだな。
ノーガードでも半減だぞ? 自動回復するし、ガードするからいつも無傷なのか。
ふむふむ。よし、付与魔法についての授業はこれで終わり。休憩時間だ。
勿論想像上の学校である。
で──現在の状況だが。
てるてる坊主の坊主部分をどうにか解除させてもらったので、二人で並んで海を眺めつつ、脳内劇場を繰り広げていたりする俺。
ひとり遊びは得意なのだ。
アゼルが海に入るのは嫌がるから、俺たちは二人寄り添って監視員と化しているからな。
なので脳内劇場で、夏期講習中。
先生向きじゃないけれど、先生は楽しかった。
また先生になりたい。
今度はシャル先生と呼んでほしい。
その時はメガネにスーツっぽい貴族服で、教鞭を執るのだ。勿論、チョークも投げるぞ?
授業内容は〝魔族の喜ぶお菓子の作り方〟。
必ずナッツ類は用意しないと。
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