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第43話
「何間抜けたことしてんだアホ二人組」
「アホは一人! 魔王様がアホなわけないでしょ!」
「どーん!」
「っと、どーん?」
「チッ」
そうしてじゃれていたところに、聞き覚えのある友人二人の声が届く。
そして間髪入れずにタロー型兵器が、みぞおち目掛けて突っ込んできた。
海エンジョイ三人組が帰ってきたのである。
弾丸と化したタローだが、アゼルがひょいと軽々抱き上げ、俺の膝に座らせた。
これぞ三位一体、親子形態だな。
呆れた表情のリューオとユリスは、レジャーシートに座り込んだ。ふむふむ、遊び疲れているのだろう。
そっとアイスキャンデーの入った小型氷室……いわゆるクーラーボックスを差し出すと、二人は無言でそれぞれいちごとオレンジを取り出し、アイスキャンデーを食べる。
……食べるのはいいが……。
ガリッ! ゴリッ! と容赦ない音が聞こえるけれど、そんなにストレス値が溜まっていたのだろうか。
真実は〝お城感覚で人目もはばからずイチャつくなこの盲目バカップルめ〟と言う心情であるが、俺は気がついてはいなかった。
アゼルは気がついていたが、一切気にしていないというのも、いつも通りである。
「しゃるー私もあいす食べるー!」
「うん、しっかり水分は取らないとな。なに味にしようか、どれがいいんだ?」
「りんご〜!」
海水で湿ったタローの翼や髪がひんやりと気持ちよくて、俺は嬉しげに微笑んだ。
リューオが「ん」と差し出すりんごのアイスキャンデーをタローに手渡し、こぼさないか見守る。
しっかりと抱きしめながらも、タローの体に大きめのタオルを被せて冷えを防止。
さりげなく水筒を差し出そうとしたアゼルが、弾丸に使ったと思い出して、ガーン! とショックを受けつつ海を見つめる。
非常に悲しげだ。
しょんぼりとしている。
気にしなくていいんだぞ。水筒なら俺がこんな事態を想定して、三つ持っている。
タローにバレないようそっとアゼルに召喚した水筒を手渡すと、アゼルは仏頂面から変わっていないのに瞳を輝かせて喜んだ。
背後の気配がな、かなりわかりやすいんだ。
耳と尻尾があるケモ耳形態のアゼルなら、もっとわかりやすい。
アゼルは水筒を開けて、タロー専用の持ち手が二つついたカップに冷えたはちみつレモン水を注いだ。
かなり恐る恐るなのは、子供の扱いが大の苦手な魔王のビギナー子育てからくる緊張である。
子供用カップとはいえ、そんなに脆くないぞ。
「よし、よし……ほらよ」
「むっ! れもんだー! すっぱいやだよまおちゃん〜」
「あ? ハッ! これはあれか、好き嫌いだな……!?」
「すき? きらいー!」
どうにかカップにはちみつレモン水を注いでそーっとタローに差し出したアゼルだが、子供の好き嫌いに直面してしまった。
そういえば、タローはすっぱいものが苦手だったな。
レモンはオレンジと間違えて齧ったことがあるので、輪切りが浮かぶはちみつレモン水は苦手みたいだ。
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