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第44話

 さてどうするのだろうか、と手を出すか否か悩む俺だが──悩んだ末に、アゼルとタローの好き嫌い攻防戦を観戦することにした。  俺を挟んで見つめ合う二人が微笑ましくてな。  リューオとユリスはアイスキャンデーの二本目に手を出している。  二人でボソボソなにか言い合っているのも、いつものことだ。  あの二人は息ぴったりだ。  俺の視界は今のところ、微笑ましさに溢れているぞ。 「グルル……いいか? すっぱいは元気になる。海は戦場だぜ、すっぱいがいっぱいいるだろうが」 「うひゃっ!? う、うみまおちゃんよりつよい?」 「俺の方が強い! でも海も結構強い。だから水分補給だ」ズズイ 「むむ……!」  ジロリと見つめ合うアゼルとタロー。  アゼルはタロー相手だと心なしか言葉が簡略化されて、擬音が多くなるみたいだな。  どちらも引かない戦いの中、アゼルはフスンと鼻を鳴らし、神妙な顔で語りだした。 「……タロー、奥の手だけどな……」 「?」 「これはシャル手作りだぜ」 「!」 「すっぱいが少なくなるよう、甘いのはちみつも足してある、スペシャルなドリンクだ」 「す、すっぱいすぺしゃる……! しゃるのすぺしゃる! の、飲むよ〜っ」 「ふふん。ほらよ。俺にかかればこんなものだな、手作りに勝てる好き嫌いじゃねぇぜ」 「俺の名前は駄洒落になったのか、楽しいな」 「「?」」  どうも、スペシャルなシャルさんだ。  微笑ましい攻防戦の行き着く先が駄洒落で、俺はなんとなくその言い回しを気に入ってしまった。  ドヤ顔のアゼルと言い負かされてドリンクをゴクゴクと飲んだタローは、キョトンとして小首を傾げる。シンクロ親子か。 「ほんッッッッとに、この魔王ファミリーはどこ行ってもブレねぇなオイ。薄らボケーっとした空気感自重しろや。海水浴感今のトコゼロだろ。むしろ溢れる実家感だろドチクショウ」 「シャルという言葉の哲学化待ったなしなんだけど。手作りが最終兵器化してるのにツッコめばいいのか、洒落にツッコめばいいのか、わけがわからないからね。はちみつレモン水僕にもジョッキでちょうだい」 「マスター、はちみつレモン水ジョッキで二杯頼むわ」 「ん? マスター?」  なぜか虚空を見つめるリューオとユリス。  突然マスター呼ばわりされた俺は、とりあえずジョッキがないのでピッチャー入りの方を二つ渡す。  渡したジョッキはリューオの方は、一気に空にされてしまった。いい飲みっぷりだな。  ユリスは美少年なのでストローを刺し、チューッと勢いよく吸っている。  後で昼食なんだが、お腹に入るのだろうか。心配だな。

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