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第46話
◇
アゼルとリューオが水泳バトルを繰り広げに行ってしまったので、残された俺たちはのんびりとお弁当を広げ、昼食タイムだ。
マルオが持たせてくれたお弁当は、大食らいの魔族たちが満足できるくらいの量がある。
お腹を空かせたタローと体型維持に気を使っているユリスが先に少々頂いたところで、問題はないだろう。
日が傾き始めて少し暑いので、俺はパーカーの前を開けてフードだけを被った。タローにはちゃんとタオルを羽織らせているぞ。
「しゃる、からーげ! これなんのからーげー?」
「んんとこれは、シーサーペントだな。海に住む蛇さんだ」
「へびさん! ガドくんといっしょだね〜」
「ガドくんは竜だから少し違うが、……待てよ? 爬虫類だから同じなのか。うぅん、ガドも揚げたら美味しいのかも……」
「この脳みそカチカチゆるふわ系! そこ真面目に考えなくていいから! どっちかというと人間のお前のほうが食材だからね? 唐揚げもステーキもたまに売ってるし」
「! しゃるおいしっ?」
「かぷかぷしてもシャルは美味しくないから、タローは唐揚げを食べるんだ。ユリスは殻つきシーフードグラタンな」
「フンッ。仕方ないから貰ってあげる! あ、シャル。後で日焼け止め塗り直して」
「構わないが、リューオに殺されるかもしれない……」
「なにいってんのさ? 相手シャルなのに。じゃあアイツは僕が殺しておいてあげるよ」
「お前の日焼け止めは僕が塗ってあげる」と言うユリスに、タローが「私も〜!」と子どもらしくわからないなりにやりたがった。
まったく、ユリスは鈍感だな。
塗り合いっこなんてしたらリューオが嫉妬して、俺を路地裏にでも連れ込みかねない。
モグモグと唐揚げを食べつつ保護者のような気持ちでタローとユリスを眺める。
「むぅ……なんかすごく失礼な勘違いされてる気がする……! あのねシャル。多少嫉妬させてお仕置きしとかないと、僕をほったらかして男の勝負なんてしてるバカがつけあがるの。確信犯だから僕」
「お仕置きだったのか。それなら俺もしよう」
「私もしゃるとゆんちゃんする〜!」
「一緒にしような」
「うん!」
「むむむむむぅぅぅ……!」
なー、と言い合う俺たちを見て、グラタンを頬袋いっぱいに頬張るユリスは不満そうに唸った。
アゼルとリューオがバトルをするのはいつものことだが、残った俺たちがこうして取り留めない話しに花を咲かせるのも、またいつものことなのである。
そうしてしばらくランチを楽しんでいると、ユリスが食後に売店のフルーツジュースが飲みたいと言い出した。
果物系の加工食品とシーフードが好きなユリスなので、フルーツジュースも気になっていたらしい。
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