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第47話

 甘いものが好きなタローもかき氷が食べたいと言い出して、せっかく海に来たので買いに行くことにした。  けれど問題は誰が買いに行くかだ。  ここが魔界のビーチで、常時威圧と顔面威圧の抑止力ツートップがいない、貧弱パーティな俺達である。  魔王城や城下街のホームグラウンドではないし、海育ちのユリスが誘われもせずわざわざビーチに来たりしなかったので、ここは一応未知の世界。  チートと怖いもの知らずがいないため、俺とユリスは一人で行くのは危ないからと腕を組んで考える。 「ううん、俺が買いに行きたいが、二人を残すのは心配だ……逆も然りだ……」 「悪かったね戦闘系魔族じゃなくて! いいんだよ僕は戦闘力じゃなくて女子力高いから!」 「その可愛さがビーチでは命取りだぞ? 自分で言うのもなんだが、俺は絡んでくる魔族を躱すのが物凄く下手だ」 「ふんっ! 可愛さのあまり絡むのもおこがましいって気がつくはずだけどね。魔王様レベルの美形に生まれ直してから来いって感じ」 「ううー……? しゃる、私がおかいものしてくるよ! ふたりでまってて〜」 「「初めてのおつかいにしてはハード過ぎる(よ)!」」  ニコニコ笑顔で無防備に歩き出したタローを慌てて追いかけ、結果的に三人組一緒に売店へ行くことになってしまった。  荷物番はいないが背に腹はかえられないか。貴重品は持ったので、なくなって困るものもないからな。  なによりタローが幼児なのに行動力がありすぎて、アゼルと並び新米パパである俺は、目が離せないのだ。  直射日光を避けてフードを被った俺と、惜しげも無く今日も今日とて可愛いユリス。  そしてご機嫌幼児なタローと、三人揃って売店へ向かったのが先程。  タローは俺とユリスと手を繋いで、嬉しげに柔らかな砂浜を踏みしめて歩く。  とびきり美少年なユリスととびきり美少女なタローを連れていると、フード男な俺もかなり視線を集めているが仕方ない。  三人でいれば街中を彷徨くわけではないし、そうそう声も掛けられないだろう。  そう高を括っていたが、ここは誰もが浮き足立って街以上にナンパが横行する、サマーフェスティバルなのだ。 「ねぇ彼女たち可愛いねー! 二人だけ? 俺らと一緒に遊ばね? マジ最高だわ〜こんな可愛い子見つけられてアガるしぃ〜」 「は? 冗談は存在だけにしてよ。さっき連れがいたの見えてなかったの? あと僕は男だし」 「つれないところもいいねいいね! 男でも全然オッケー、可愛ければ大丈夫! ツンデレ系もありみだし!」 「身の程を知れって言ってんの!」 「は、はじめまして? りてぃたろと・ないるごーんといいます。た、たろーです……」 「うんはじめまして! 綺麗な翼だね! 触りたい、けど触らねぇぜ! イエスロリータノータッチ!」 「ひぅ……っ! お、おにいさんこわいひと……?」 「滅相もねぇ! 超絶紳士」 「しんし……?」 「あ! ちみっ子から離れてよロリコン!」 「ショタコンも兼ねてますので君カワウィーネー!」 「気持ち悪い」  ──ば、売店に並んでちょっとジュースとかき氷を買いに行っただけなのに、俺の友人と娘がナンパされている……!  あまりに予想外すぎて、俺は右手にジュース、左手にかき氷を装備したまま一瞬フリーズしてしまった。  そういえば魔族の手の速さをすっかり忘れていたぞ。既婚以外は手を引く要素にならないという、とんでもないゴリ押し種族だった。

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