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9.三色の子ブタ
〈無印以降 フォロワーさんと共通のテーマで書いたパロディ作品「三匹の子豚」〉
この世のどこかの平和な森。
そこには仲のいい三つ子の子ブタが、少々マイペースすぎるお母さんブタと一緒に、仲良く暮らしていました。
「ストロベリージャムクッキィィィィッ!」
一番上は赤い瞳の赤ブタちゃん、アリオ。
「ストロベリージャムクッキーッッ!?」
二番目は青い瞳の青ブタちゃん、オルガ。
「ストロベリージャムクッキーっ!!」
そして末っ子、黄色い瞳の黄ブタちゃん、キリユ。
陽気で気のいい三つ子の子ブタは、いつも元気。
遊ぶ時はいつも一緒で、好物もだいたい同じ。違うのは微妙なテンションの差と瞳の色くらいです。
「ンぁー……勢いがありながら逆に尋ね返してくるところに、ママ芸術点。オルガの勝ちィ」
そんな三匹をハンモックに寝そべって眺めているのが、お母さんブタのガド。
「「端数ぅぅうぅぅぅうううぅッッ!!」」
「ヒョーイ! 俺、四枚ゲットだぜ」
「クックック。ママひと袋な」
「「「アイサー!」」」
ピシッ、と敬礼する三匹は、いい子のお返事です。
おやつのクッキーを分けていたようですが、ひと袋十枚入り二つのひと袋を母ブタに持って行かれても、三匹は異議なしな様子。
ちなみにお母さんブタと言っても便宜上そうなっているだけで、母ブタはオスです。
空も飛べましたし、ウロコや長い尾、ぎらつく牙や爪もありました。概ねドラゴンでした。
けれど森には、ドラゴンが母ブタではいけないというルールはありません。
なので三匹は誰も気にしませんでした。
それよりも三等分するとだいたいの物が一つ余ってしまう方が、気が気でなりませんでした。
そんな平和なある日のこと。
お母さんブタは、素敵なティータイムの最中、呑気な様子で言いました。
「ああそうそう。ティータイムが終わったら独り立ちしろよォ〜」
「「「…………」」」
母のいうこと……それはすなわち、決定事項。
それもそのはず。
ブタの世界では、育った子ブタはみんな独り立ちをしてマイホームを持つのです。
一家の大黒柱である母ブタとて、独り立ちした時にこの四匹住まいの家を建てました。
4LDKの庭付き一戸建てで、展望テラスにはウッドテーブルにハンモックまで。
そして狩りをして、子供達に三食おやつ付きに昼寝推奨の素敵な生活を提供している母ブタ。
対して、日々惰眠を貪り、家事手伝いもしない子ブタ達。
家庭内での子ブタの立ち位置は、非常に弱かったのです。
「んじゃ、独り立ちして各自家を建てるんだぜィ」
──こうして三匹の子ブタ達は、散り散りになり、自分の家を建てて自立することになりました。
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