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思い掛けない告白
「わかってんのか? お前、兄様の影響か知らんが前よりずっと匂い強くなってる。会ったばかりの頃なんて、その弱すぎる性を哀れに思ったほどなのに。Ωな上にそんなんじゃ、ってさ……」
レノはミケルの頬を撫でながら、今にもキスをしそうなほど顔を近付ける。「薬は?」と問われ、ミケルは小さく頷いた。
抑制剤はずっと同じものを何年も飲んでいる。発情期でもちゃんと抑制剤を服用すれば普段となんら変わらずに生活できていた。でもここ最近……そう、エイデンと一緒に生活を始めてからはその抑制剤の効き目が薄れたように感じていた。
「そもそも何でなんだ? だって運命の番なんだろ? え? 発情期なんて特にそういう気分にならねえの?」
「え……と、実はまだ……キスですら……」
レノにそう問い詰められれば、恥ずかしさを堪え白状するしかない。性交渉どころかキスすら碌に交わしていなかった。愛おしそうに頬や額にはキスを落としてはもらえるものの、愛を確かめ合うような唇を合わせるキスは未だにしていない。
ミケルの思い掛けない告白にレノはポカンと口を開け、しばらく驚愕の表情を浮かべていた。
ミケルはレノに初めて抱かれたことで、Ωとしての快感を知ってしまった──
レノが指摘する通り今までは性に対する欲が弱かったのだと思う。番いが欲しいとも思わなかったし、経験がなかったとはいえ性的な欲求は皆無に近かった。今更ながら性に目覚めてしまった体は否応なしに運命の人であるエイデンを求めてしまう。
「兄様は何を考えてんだ?」
「………… 」
もともと少々掴み所のないところがあったエイデン。
常に一緒にいればちゃんと「愛されている」のは伝わってくる。側にいるだけでこの上ない程の幸せを感じることができる。それはエイデンだって同じはずだ。それなのに発情期が近付いても何のアクションも無く、求められなければやはり不安にもなった。
「俺……やっぱり運命の番じゃなかったのかな」
「は? 心にも無いこと言ってんなよ。ちゃんとわかってんだろ?」
「……はい」
レノの言う通りだった。これは言葉には言い表せられないものの、ちゃんと感じ取ることができていた。間違いなくエイデンと自分は何物にも変えがたい強い繋がりがあるという事。必然的に惹き寄せられた運命の番だということを。
なら何故、エイデンはミケルを抱こうとしないのか…… 番の誓約を交わしてくれないのか。
「だったらその体、俺が慰めてやろうか?」
ミケルの頬を撫でるレノの掌が、優しく頭を抱くようにそっと触れる。そのまま引き寄せられ、唇が触れそうなくらいに顔が近付き、どうだと言わんばかりにレノはニヤッと笑った。
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