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迎え

レノはエイデンにとってかけがえのない大切な者…… 強い絆で結ばれているのはミケルにも分かる。エイデンの持っている感情を共有しているかのようにそれは自分にも伝わっていた。ミケルにとってもレノは大切な家族で愛すべき者だった。 だからそんなレノに……ましてやエイデンに次ぐ程の強いαにそう言われてしまえば抗うことも出来ずに体が強張る。発情期も重なって、ダメだとわかっていても意に反して湧き出てくる情欲にどうしても体が疼いてしまってしょうがなかった。 「レノ……様、ダメです……冗談はやめてください……俺、ダメです」 愛おしそうに頬にキスを落とすレノに力なくミケルは顔を背ける。首筋から耳朶を甘噛みされ、その腰を撫でられればどうしたって吐息が漏れてしまう。 「冗談じゃないよ? だって兄様に抱いてもらえないんだろ? だから代わりに俺が抱いてやるよ。ミケルさっきからいい匂いしてるんだもん……」 いつの間にか部屋の奥の寝室まで押しやられ、いとも容易くベッドに押し倒されてしまった。エイデンの匂いと近いレノの体が覆いかぶさってくると、エイデンに抱きしめられているように錯覚してしまう。それでもやっぱり自分を弄るその手は最愛の人エイデンではない。罪悪感だけが意識の外れの方で小さく渦巻いていた。 「はい!……ここまでね。お迎えが来たよ? 今日は早いんだね」 突然パッと体が軽くなる。それと同時に全身にフワッと纏わりつくような幸福感に、ミケルは顔を向けなくともすぐそこにエイデンがいるのがわかった。 「ミケル? 大丈夫かい?」 いつもと変わらない優しい笑顔で手を差し伸べるエイデンに、ミケルはちょっとの気まずさを覚えながらその手を取った。誓約を結んではいないものの、番だと認識している相手が他のαに組み敷かれているのを見ても何も感じないのだろうか…… レノに対しても咎めることもなく、寧ろ楽しげにも見えた。 我慢が足りない、誠意が無いと罵られるのも辛いけど、何も言われないのもそれはそれで寂しくもあり、更に自信がなくなっていく。 「エイデン様……今日は何故?」 普段ならミケルの仕事が終わった頃合いを見て迎えに来てくれる。それなのに今日に限ってはまだミケルがこの庭園に来てから数時間も経っていない。 「何故って、そんなのわかるでしょ? レノに揶揄われて僕の大事な人がその気になっちゃ堪らないもの……」 ここに来てやっと愛しい人の嫉妬心が垣間見れ、ミケルは少しだけ嬉しく思った。

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