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不思議な習性

エイデンから正式に番の誓約を交わしてもらってからは、嘘のようにその後の発情期が楽になった。 楽になったと言ってもそれは発情時の体調不良が主で、エイデンが側にいる時は今まで以上の情欲に襲われ、番う前よりそれは激しく感じた。 番のいるΩの放出しているフェロモンは他人には効かない。ミケルのフェロモンもただ一人の番、エイデンにだけに効果がある。だからもう抑制剤は飲まなくていい、発情期の間は家でゆっくりしているといい、とエイデンに言われたミケルはその通りにしていた。 「エイデン様……」 エイデンは「ミケルが動けない間は自分が外に出て働いてくるよ」と気楽に言い、出て行ってしまった。それっきり昨日から帰ってきていない。エイデンの身に何かあったのでは? と一時不安にもなったけど、それは無いと本能で感じ取りミケルは大人しく一人主人の帰りを待った。 待っている間も何故だか体が熱くなり、まるですぐそこにエイデンがいるかのように欲情した。これはもうどうしようもないΩの習性。自分が何をしているのかわからないまま、ミケルは自分の寝床にせっせとエイデンの私物を運んでいた。 不思議と発情期の間は匂いに敏感だった。勿論これも初めてのこと。番う前にはなかったことだ。 敏感と言っても不快なのではなく、番であるエイデンの匂いにだけ敏感に反応してしまう。本人が近くにいなくともその主人の匂いのあるものが側にあるだけで心が満たされ安心できる。愛する対象が不在なら尚更エイデンの匂いのするものを無我夢中で掻き集め、自分のベッドにそれを散らした。 「わお……ミケル、そこにいる? 可愛いミケルは何をしているのかな?」 不意に聞こえたエイデンの声。それでもミケルはここから出ることができなかった。エイデンの匂いに包まれてしまった今、どうしてもこの心地の良い空間から出るなんてことは出来ず、黙ってここで目を瞑った。 「ミケル? 僕はここにいるんだけどな…… 顔を見せてよ」 エイデンが見ているのは、ミケルのベッドの上にこんもりと積まれた自分の衣類の山。その脇には靴や下着、ベルトまで散らばっている、そして恐らくその山の中にいるであろうミケルの足先が隅っこからチラリと見えているだけ。 噂には知っていたΩの「巣作り」が、こんなにも可愛らしく愛おしいものだとは知らなかった。情欲の対象である自分が目の前にいるというのに、この可愛い番はこんな愛の巣の中で満足して眠っているのだ。しばらくそっとしておこうと思って眺めていても一向に中から顔を出してくれないミケルに痺れを切らし、エイデンはひとつその山を崩すようにそっと退かした。

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