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第3話
つまり悪循環に陥り、いまだに初合体をなしえていない体たらくだった。
そして先述したとおり、都合六十四回目の挑戦も尻すぼみに終わった。
誠也はソファの背もたれに上体をだらりとあずけて、こめかみを揉んだ。
夢精によってパンツがねばねばする朝とおさらばしたい。パンツの中じゃなくて、愛しい愛しい翼くんの内 で放ちたい、ぬるぬるにしたい。
「あのね、長期戦でのんびりいこうよ。今は手をつないで眠れるだけで幸せだよ」
翼が、にっこり笑いかけてきた。誠也は一日じゅう撫でくり回しても飽きない、ぽちゃぽちゃしたおなかに手を押し当てた。
俺の幼な夫 は、なんていじらしいのだ。地上に舞い降りた本物の天使。
二十八年間、守り通してきた童貞は翼に捧げるためにあったのだ。
翼は、たぷたぷした自分の二の腕をつまんで、ため息をついた。
誠也は「ありのままの翼でいてほしい」と言ってくれるが、本当は、幸せ太り増量中の躰にはそそられないのかもしれない。確かにつながることのみが目的なら、翼が抱く側に立候補する手もある。
だが、それでは意味がないのだ。ぎゅうううっと抱きしめてもらいながら誠也の存在を躰の奥深くで感じて、そのときこそ大っぴらに、うれし恥ずかし新夫 気分に浸れるはず。
微妙に気まずい空気が流れるなか、玄関のチャイムが鳴った。
折悪しく新聞の集金か。誠也は舌打ち交じりに応対に出て、あんぐりと口をあけた。きんきらきんの男がドアの隙間に躰をねじ込んできながら、鼻をひくつかせたのだ。
「愛のお悩みあるところに、ばななマンあり。なるほど、犬死にした精子の怨念が漂っているな」
スパンコールをちりばめた学ランを身にまとい、右手 に男根をかたどったホイッスル、弓手 にチョーク型のローターをひと箱。
見よ、この小粋な装いが、ばななマンの勝負服だ。
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