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第4話

 ばななマンは、すたすたとリビングの中央に進んで仁王立ちになった。  誠也は翼を背中にかばい、思った。愛夫(あいさい)には指一本触れさせないぞ、と。  翼は思った。あの豪華な学ランはド〇キで買えるのかな、と。 「事情は、うんぬんかんぬんであるな。木崎誠也よ、勃起中枢に異常をきたしたのはハニーを神聖視するがゆえとは天晴れな根性であるが、自縄自縛に陥って番いそこねるようでは本末転倒。このままでは馬並と評するにふさわしいイチモツが宝の持ち腐れであるぞ」 「ちちんぷいぷい、と呪縛が解けりゃ、苦労するやつはいない!」  などと誠也は怒声を浴びせるはしから蒼ざめていき、唇の前で人差し指を立てた。 「しー、しー、しー」  あんな、えぐいものは挿入(はい)らない、と翼を怖がらせるのは断じて避けたい。  だからムスコがもっこりししだい適宜、タオルをかぶせるなどして視界を遮るよう努めてきたのだ。    一方、翼はジャージの中心をまじまじと見つめた。馬並というのは俗に言う巨根のことで、すごいお宝を隠し持っているのを内証にしていたなんて水臭い。  お風呂で背中の洗いっこをしよう、と誘っても断られてばかりで、ちょっぴり傷ついたんだもん。  ソファにぽてんと腰かけたはずみに、口淫であやされている最中のペニスのように、ウサギの耳がピコピコ揺れる。  ばななマンが、そんな翼の全身を矯めつ眇めつ眺めた。  ちなみにバニーちゃんの衣装は前開きのベストに、もこもこ素材の尻尾つきホットパンツで、タイツの網目から餅肌がはみ出すさまがセクシーだ。 「古来よりチラリズムが尊ばれてきた日本において、過剰な露出は百害あって一利なし。推奨品は高校の制服で、それに着替えて体育倉庫での隠れチュウ等、不遇の恋人時代にやり残したあれやこれやの供養をすませることが、中折れ病の特効薬である」 「制服エッチは真っ先に試した! だけどブレザーを脱がせたとたんムスコのやつ、ぐんにゃりだ。嗤いたきゃ嗤え」

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