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第7話

「教師と生徒。人目を忍ぶ恋仲のふたりにとって、校内ですれ違う一瞬が逢瀬だった」  ロミオとジュリエットの語り手よろしく、ばななマンが口調をがらりと変えた。    誠也は、うなずいた。翼とばったり会うことを期待して、昇降口や渡り廊下をうろうろしたっけ。  翼は瞳を潤ませた。学食で誠也と相席する幸運に恵まれると、ときめくのと比例してご飯をこぼしがちになり、友だちの手前ごまかすのに苦労したっけ。 「翼くん、愛している!」 「おれは百倍、愛してる!」 「だったら、俺は一億倍だ!」  いわば試練の季節に、全校集会の席上でこういうふうに交際宣言をしたかった。  当時の無念を晴らすように、ひしと抱き合うふたりの姿は、スクラムを髣髴とさせた。  ばななマン曰く供養その二がすんで、中折れ病が完治するメドが少なからず立ったはずだ……が。    (やわら)の道はと、ばななマンが往年のテレビドラマの主題歌を口ずさみ、新婚カップルは反射的に奥衿を取り合った。  押さば引け、引かば押せ、と基本の足運びをおさらいするのにともなって、もこもこパンツがジャージの太腿を掃く形になる。  いきおい、男の子印のツクシにさざ波が走る。 「もどかしい感じにこすれて、元気になってきちゃった」  翼が上目づかいに、ぺろりと舌を出した。  エロ可愛い仕種はケダモノの大好物だ。誠也はベストをたくしあげるが早いか、乳首にかぶりついた。  アコヤ貝の身のあわいに慎ましやかにある真珠のように、ほの赤い粒は乳暈になかば埋もれている。ゆえにふだんは、指と舌で丹念に慈しんでから食む。  なのに、いつになく気が急いて、のっけからサイクロン掃除機並の吸引力でもってチュバチュバ、チュウチュウ。 「ん、あん……そんなに強く吸ったら、もげるぅ……んん」 「タワケ! あわてる乞食はもらいが少ないと慣用句にあるとおり、ツケが回ってくるぞ」

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