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第12話
「魔羅の屈伸運動、はじめぇ! 赤勃てて、白勃てて、赤勃てないで白勃てる」
対象をペニスに特化したそれは、ばななマン印のメソッドによる鍛錬法で、その効果のほどは某機関において折り紙つきである。
翼を大切に思うあまり、かえってヘタレぶりを露呈する。こじらせにこじらせた中折れ病は、メンタルの弱さに起因する。
ついては、荒療治をほどこすのが妥当。ばななマンは総合的に判断して、スパルタ路線に舵を切ったのだ。
「赤勃てて、白下げる。白勃てて、赤勃てる」
押忍 と誠也は、ばななマンを睨 め据えた。足を肩幅に開き、腰の後ろで手を組む。
号令に合わせて、純粋に意志の力のみで可動域が限られるペニスを上げ下げするのは至難の業だ。脂汗がにじみ、歯を食いしばっても呻き声が洩れる。
「赤萎えて、白萎えて、赤勃てないで白勃てる。中崎誠也よ、千本ノックの精神だ」
スポ根漫画の鬼コーチよろしく、ビシバシと指示を飛ばす。
勃てそこなうと、チョーク型のローターがふぐりを薙 ぐという、痛いなかにも鈍い快感があるペナルティが科せられる。
「誠也さん、ファイト!」
誠也は息も絶え絶えに親指を立ててみせた。苦しい、だが愛の鞭だ。
この特訓の狙いは、海綿体に流れ込む血液の量をコントロールするコツを摑むことにあるはず。そうだ、つながりを保ったまま四十八手をコンプリートするのを目標に負けるな、俺。
愛する翼くんと契りおおせるためなら、凍らせたムスコで釘を打つ芸当ですらマスターしてみせる。必ずや漢 になるのだ。
「ゴー、ゴー、レッツゴー、せ・い・や!」
翼は、三三七拍子のリズムでウサギの耳を振りたてた。
馬の鼻先に人参をぶら下げてやる気を引き出すように、ローションが泡立つ勢いで準備に余念がない桃尻も振りたてた。
「む、おぉおおおおおおおお……っ!」
「そうだ、その意気だ。赤勃てて、赤勃てて、赤白勃てて、おめでたい!」
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