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2日目の朝ー3

「おはよう、先生」 「ああ」  そのまま唇が重なると思ったその時、ギシギシと廊下の軋む音がした。  どちらからともなく2人は溜息をついて、体を離した。それと同時に襖がカラリと開いて、案の定遠山が顔を出す。 「遅いぞ、智!目が溶けてバターになるぜ?」 「もー、今日は疲れてるからゆっくりするって言ったじゃん!!」 「そんなこと言ってると、何も出来ないまま東京に帰る羽目になるぞ!ほら、起きた起きた!布団は俺達が畳んどいてやるから、さっさと朝飯食って来いよ!」  遠山に追い立てられるように、設楽は1人で居間に向かった。後ろ姿がどうにも納得できないと怒っている。  後には、遠山と大竹が2人で残された。  設楽と妹を少しでも長く2人でいさせてやりたい兄心なのだろうか。遠山はうまくいったとばかりにニッカリと笑って、今迄設楽が眠っていた布団の上に横になった。 「大竹くんは、よく眠れた?」 「ええ、まぁ」  素っ気ない返事に苦笑しながら、遠山がいたずらっぽく目を光らせた。 「ね、皆気にしてるんだけどさ。聞いて良い?」 「何です?」  遠山は寝そべりながら、大竹を見上げた。思ったよりも真面目な顔をしている。 「何で大竹くんは、智と一緒にここに来たの?教師が一生徒と2人きりでって少しおかしいよね?」 「……」  大竹は何と言った物か、少しだけ考えた。  教師と生徒ではあるが自分たちは友人で、いつも2人で出歩いているから、その延長線ででここに来た、と?  だが、それは普通に考えればありえないことだ。  公立校ならば、教師と生徒が個人的に連絡を取り合うことは、教師の信用を失墜させたとして処罰対象になる。私立校では教師の子供が同じ学校の生徒になるような例もあるから、厳密にそこを問われることはないが、それでも個人的なつきあいは決して良しとはされていないのだ。  大竹がすぐに返事をしないことをどう取ったのか、遠山は起きあがって少し真剣な顔をした。 「ひょっとして、あいつ学校で何か問題でもあるの?」  普通に考えればそうなる。実際、自分達の始まりも、学校内での個人的な問題から、大竹がシェルター代わりになったことが発端なのだから、あながち間違ってはいない。設楽の両親が自分に設楽を任せるのも、同じように考えてのことだ。  そう思わせておくのが一番良い。  ……自分達の関係は、やはり人に言って理解されるものではないのだから。 「まぁ、細かいことは守秘義務があるんで」 「そっか~。そうだよな、そうじゃなきゃこんなとこ、お目付役付けられて来たりしないよな」 ──── お目付役を付けられて ────  何となく、その言葉にズキリと胸が痛んだ。
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