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3日目・朝ー1

 翌朝。  いつも通り6時に目が醒めて、大竹はぼーっとした頭をがしがしと掻きむしった。  ―――昨日は惨敗だった―――  風呂上がりに部屋に戻るなり、「先生、すげー良い匂い!」とか何とか言って盛った設楽に押し倒され、「キスだけだから!キスだけ!!」と言いながら、ゴリゴリゴリゴリかったい物を擦り合わされたのだ。  もうお互い何だか分からないほど興奮して、気がつくと自分の甚平の上着は脱げかかってるし、設楽のTシャツは胸までめくれ上がっているし、途中で互いの物が擦り合う刺激だけで達きそうになった瞬間、よく我に返った俺!偉かった俺!!  つーか設楽いくら下着もズボンも穿いてたからって、あいつ俺のにがっつり押しつけたまま普通に腰降ってやがったぞ!それダメ!どう考えてもそれ普通に○ックスじゃん!!だめ―――!!!  などという事を反芻した辺りで、どうにも布団の中が収まりのつかないことになってきた。やば……。この時間はもう伯父さん夫婦は畑仕事に出かけているし、おばあさんは朝の支度を始めてるから、そんな朝の日常の気配を感じながらトイレで抜くのも抵抗があるし、かといってここで抜く訳にはいかないし。  くそっ。こいつどーしたら……。 「ん…先生、お願い、このまま……」  びくっとして振り向くと、設楽は布団を丸めて抱き込み、恥ずかしげもなく腰を擦りつけている。てめっ、何の夢見てんだよ!!  ぶん殴ってやりたい気持ちをぐっと堪える。自分だって端から見たらあんな風に寝ていたかもしれないんだし……。  仕方なく大竹は背に腹は替えられないとトイレに行き、小窓からジワジワと降り注ぐ朝日を浴びながら、自分の物を軽く扱いて、悶々とした気持ちと共に吐き出した。 「はー。……何やってんだろう、俺……」  設楽があれだけサカるのも、自分が煽られて一緒にぶっ飛ぶのも、どう考えても昼間の反動だ。  昼間、一緒にいられないから、お互いにしなくて良い嫉妬などをしているから、だから2人きりになって誰にも邪魔されないと思うとあんな事になってしまうのだ。  理屈では分かる。  理屈では分かってるんだけど、だからといってそれでも夜はやってくるし後4回はここで夜を迎えなければいけないのだ。  大竹は大きく溜息をついた。  それでもこんな物思いなど良い方で、この後また設楽が美智と2人でいるところを見なければならないのかと思うと、気が重いのは仕方ない。 「……設楽、そろそろ起きろ」  設楽の肩を軽く揺すってやると、設楽は大竹の顔を見て、状況が把握できていないようににっこりと笑い、「先生、もう1回」と言って抱きついてきた。 「バカ、起きろ。朝だ」 「え……?」  それからおもむろに辺りを見回し、はーっとわざとらしく溜息をつくと、「せっかく良い夢見てたのに……。つーか、取り敢えずこいつ1回出して良い?」と何の躊躇いもなく自分の下着に手を突っ込んだ。 「おい、俺が見てる前ですんな」 「何で?良いじゃん。それはこないだ先生のうちでOK出たんじゃなかったっけ」 「出してねーよ」 「うそ~ん。あ~あ、夢の中の先生、すっげぇ可愛かったのに」  設楽は唇を尖らせながら上半身を起こした。そのままおもむろに左手で肘をつき体を支えると、右手を下着の中で緩く上下させる。テメ、人の目の前でなにしやがるか……!!! 「やめろよお前そういうのマジで!だいたい、可愛いのは俺じゃなくてお前だろう?」 「いーじゃん。夢の中で位何したって自由でしょ。先生、ティッシュ取って~」  開き直った設楽の態度に憤慨した大竹は、傍にあったティッシュボックスを設楽の顔目がけて投げつけると、さっさと部屋を出て行った。  設楽の野郎。俺の反応を見て楽しんでやがる。そうは行くか。  背中に感じる設楽の視線と小さな呻き声を意識から追い出して、大竹は窓の外に広がる大きな空を見た。  今日も長い1日になる。  そう思ったが、その予想は外れた。   その日、美智は来なかったのだ。

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