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4日目・登山ー5

「先生!あそこ!鳥の巣がある!」 「どこだ?」  近くの木を指さして、設楽が嬉しそうに笑う。大竹もつられて設楽の隣まで行くと、設楽の指の先を目で追った。 「こんな高いとこにも鳥って巣を作るんだね」 「ゴジュウカラですか?」  大竹が浩司を振り返ると、浩司は双眼鏡を取り出して確認した。 「ああ、そうですね。智一、よく見つけたな」 「へへ!先生、俺すごい!?」 「ああすごいすごい」  大竹がなおざりにポンポンと頭を叩くと、智一は即座に頬をぷーっと膨らませた。 「え?智くん、どこ?」  美智が訊いてくると、智一は一応1本の木の上を指さした。 「あの辺の木の洞から顔出してるよ」 「え?どこ?どこ、智くん?」  わざとらしく顔を寄せてくる美智をスルーして、智一はさっさと先を歩き始めた。 「あ、待ってよ智くん!」  美智が可愛らしく設楽に駆け寄ってシャツの裾を握っても、設楽は振り返りもしなかった。  結局、設楽は美智と一緒に並んで歩いても、最後までそんな調子だった。美智の隣を歩いている筈なのに、何かにつけ「先生」「先生」と大竹を呼びつけ、昼食を食べる時など、「すげー良い景色!」と叫ぶなり、大竹の隣りに立って自撮りで景色を入れたツーショット写真を撮って、皆を呆れさせた。  当然のように美智が「私も一緒に写真を撮りたい!」と言ったら、「じゃあ皆も入って入って」と集合写真を撮って美智をむくれさせたりもした。 「2人で写真くらい良いじゃない!」 「だから!俺、東京の彼女に操立ててるんだよ」 「写真くらい良いでしょ!?」 「何かの時に目に入って、勘違いされたら困るから」  2人が言い争いを始めると、大竹が大きく溜息をついた。 「おい、設楽」  大竹の厳しい目つきに気づくと、設楽は下唇を突きだして、「はぁい」と返事をした。  その様子はいかにも学校の生徒が教師にいたずらを見つかったときのようで、今更ながら大竹は設楽に付き添っている教師なのだという印象を皆に与えた。 「じゃあ俺達ここで下山するけど、2人で大丈夫だな?」  昼食が終わって分かれ道まで来たとき、浩が最後に確認してきた。 「そんなに難しい山でもないから、先生なら大丈夫そうだけど」  もう1度大竹と地図の確認をしてから、浩司はまだ不服そうな遠山と美智を連れて、山を降りていった。 「あー、やっといなくなったー!!」  3人の姿が見えなくなるなり、設楽が即座に伸びをして叫んだ。それからはっとして大竹の顔色を伺ったが、大竹も設楽を嗜めるどころか肩をコキコキと鳴らし、「あー、ゆっくり歩くと疲れるわ……」とぼそっと漏らした。 「何だ、先生も疲れた?」 「そりゃ疲れんだろ。気だって遣うし」  その仏頂面が嬉しくて、設楽は満面の笑みを浮かべた。 「じゃ、先生。今度こそ登山を楽しみますか!」 「おう」  2人は互いに笑い合うと、見晴台を目指して歩き出した。

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