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6日目の午後ー1
結局、釣果は伯父さんが18匹、大竹が11匹で、設楽は8匹という結果に落ち着いた。
「いやぁ、大漁だな。近所に少し配るか」
「設楽は脂身決定な」
「ひでぇ!年齢で割れよ!俺が1番年の割に釣ってるから!」
「若いんだからもっと頑張れよ」
ギャンギャン叫びながら家まで戻り、魚をおばあちゃんに託してから昼食を済ませ、そのまま大竹と設楽は2人で町まで行って、バーベキューの食材を買い込んだ。
帰りの車の中で、設楽は何となく口数を減らして窓の外を見つめていた。流れていく緑が、目に優しい。
「どうした、疲れたか?」
「ううん、俺は助手席に座ってるだけだし」
先生の方が疲れたでしょ?と、剥いた飴を口の中に放り込んでやると、大竹は少しだけ眉を顰めた。
「てめ…、ハッカじゃねぇか」
「あれ?嫌い?」
大竹がモヒートを注文しているところを何度か見た事がある。ミント系が苦手な筈はないのだが……。
「……サクマドロップって知ってるか?」
「缶入りの奴?火垂るの墓に出てくるよね?」
大竹の頬が、左側だけリスのように膨らんでいる。どうやら舌の上に乗らないように、外に押し出しているらしい。
「うちは兄貴が年離れててな。家が店やってる関係で、俺達の面倒は兄貴が任されてた訳だ」
「え?清香さんとは近いでしょ?」
「あぁ。姉貴とは3つ差だけど、兄貴とは8つ離れてる」
「それは結構違うね!」
「おう」
その兄貴がサクマドロップを預かると、いつも美味しいフルーツのドロップは自分で先に食べてしまって、大竹にはハッカの飴ばかり押しつけていたのだと言う。
「大人気 ねぇと思わないか?高校生が小学生相手に、ハッカ押しつけてくんだぞ?正直俺はもう一生分のハッカの飴を食い尽くしました。とゆー訳で設楽」
大竹はおもむろに車を山道に停めると、シートベルトを外して設楽の上に覆い被さってきた。
「!!」
設楽が目を白黒させている間に、大竹の顔が設楽の顔に重なり、そっと唇が触れてきた。
「ん…先せ……」
設楽はすぐにうっとりと目を閉じて、大竹の舌に自分の舌を絡めた。ハッカの味がする。
そしてヌルリとその舌が設楽の口腔に忍び入ってきたと思ったら。
「!」
ゴリッとした感触と共に、ハッカの味が強烈に口の中に広がった。
大竹が自分の口の中にキャンディを口移しで寄こしてきたのだとようやく気づいた設楽は、わざとそのキャンディを口の中で大竹に押し返した。
暫く2人はキャンディをぬるぬると舌で玩 び、互いの口の中を行ったり来たりさせていた。丸いキャンディが口の中を刺激して、それだけで下半身が熱くなってしまう。
「も…、先生……」
これ以上のことはしてくれないくせに、随分と自分を刺激してくる大竹を、設楽はぎゅっと睨みつけた。
「そんな顔すんなよ、可愛いな」
くくっと笑う大竹の口の中には、もうキャンディは入っていない。設楽にキャンディを押しつけたことに満足したのか、やっと大竹はシートベルトを締め直して車を発進させた。
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