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6日目の午後ー5

「も……何必死になってんだろ、俺達」 「ちょっとバカ過ぎだな……」  ひとしきり2人で笑い合うと、大竹は笑いを収めて設楽の前髪をくしゃりと掻き混ぜた。 「先生…?」 「そうやって笑ってろよ」 「え…」  優しい視線にどきっとする。  大竹先生はずるい。こんな時にそんな風に言われたら、もっともっと、どんどん先生を好きになるに決まってるのに。 「お前が泣いてると、俺、ちょっときついわ」 「先生…」  ムズムズするような甘い雰囲気に、設楽はどうして良いのか分からなくなった。自分のしでかした事の為に自分で癇癪を起こして先生を困らせて、そのくせこうして優しくしてもらっている。  先生は、おれを甘やかしすぎる。  これじゃあ俺は、どこまでやったら先生に呆れられてしまうのか、怒らせてしまうのか、分からないじゃないか。  困ったようにもじもじしていると、大竹の手がそのまま角度を変えて、がしっと顔面全体に掴みかかってきた。 「うわっ!何!?」 「すまん……」 「え!?」  大竹の手はでかい。そうやって指を広げて顔全体に貼り付けられると、設楽の顔はすっぽりと覆われて、何も見えなくなってしまう。 「……今のはちょっとくさかった。忘れてくれ……」 「何!?ひょっとして、照れてるの!?」  その手を剥がして顔を見ようとしたのだが、大竹の手はビクともしない。 「ちょっ!何も見えないんだけど!」 「見るなっ!」  そのまま大竹はぐいっと設楽の頭を助手席側のドアに押しつけて、シートベルトを締め直して車を発進させた。 「も…先生、そーゆー事されると可愛いんですけど?」 「うるせぇバカ、1度眼科行って診てもらってこい!」  大竹の横顔はうっすらと赤らんでいて、恥ずかしさを誤魔化そうと不機嫌に構える横顔は、俺だけの物だと嬉しくなる。 「先生、好きだよ」 「……あぁ、俺もだ」  車の中に流れる甘ったるい雰囲気をぶち壊すように、大竹はエンジンを空ぶかししてからアクセルを踏み込んだ。

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