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第4話

翌朝、片倉はアパートのベッドの上で背広を脱いだだけの、昨日、久川家へと赴いた時の姿で横になっていた。 自分の教え子の家庭訪問へ行くと、その父兄から身体の自由を奪われて、キスをされてしまった。そして、一方的に愛撫されて、自分か、久川のどちらの体液かは分からないが、自らの身体にかかっていた。常識的に考えると、やや考えにくい出来事だった。ただ、必要でない時は学校で保管する筈の個人情報の掲載されたファイルをそのまま自宅へと持って帰ってきた点やタオルか何かで白い体液は拭われたものの、赤く残る吸い痕はその出来事を片倉に再認識させた。 「とにかく、ファイルを学校に戻しに行こう」  まだあまり上手く動かない脳でそれだけを考えて、自分へ言い聞かせるように口にすると、片倉は着ていたワイシャツやスラックスを脱いだ。それに、シャワーも浴びた。 今日だけは誰にも会わないように。そんな淡い期待を込めながら身支度を済ませると、片倉はアパートの外へと出た。 「片倉先生」  空は雨こそは降っていないものの、連日降り続いた空と同じように、灰色だった。それに対して、白の、大きめの車が片倉の目に飛び込んでくる。運転席の手前のドアから1人の男が出てきて、片倉に向けて会釈した。 「片倉先生」 と、もう1度呼ぶ男は他の誰でもない、久川港だった。

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