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第6話

「昨日はすみません。まずは告白してから。と思っていたのに、先生の顔を見ていると我慢できなくて」  久川の運転する車が新谷小学校から高速道路の料金所を通り過ぎ、暫く走った頃だった。  高速へ乗ろうというのは久川が提案した事だったのだが、片倉の家で久川と2人きりになるのは躊躇した。昨日みたいな事にされたとしても、自身の家で、まで久川に好きにされるのは恐かった。  ただ、だからと言って、下手に自宅の近所の店に入り、話をするのもリスクが高すぎる。自分達を知る者、特に、自分が受け持っている児童と保護者の耳に入ってもいけないからだ。 「我慢できなかった……」  その片倉の声にはいつもの堂々とした雰囲気はなかった。本当は激怒しても、嗚咽しても、久川からされたことを考えると、許される筈だと片倉は思う。ただ、ただ思うだけで、片倉は戸惑っていた。  嫌悪感すら抱きかねない状況なのに「片倉先生が欲しくて堪らなかった」、「今日は先生の反応を見ながらできますね」と言われると、嬉しいに近い気持ちにすらなっていて、困惑していた。  だが、それらの片倉の葛藤は久川の呑気な言葉で吹き飛んでしまった。 「その前に何か、食べません? 次のサービスエリア、停まりますし」  久川の言う「次のサービスエリア」は規模としてはバーガーショップが入っている、大きなものだった。久川は特にトイレやフードコートの入口が近い場所ではなく、それらからは離れた、駐車スペースの空いている場所に車を停めた。 「じゃ、何か、買ってきますね」  久川はシートベルトをはずすと、片倉に「何か、希望はありますか?」と尋ねたが、片倉は「お任せします」とだけ言うだけで精一杯だった。

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