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第7話

「お待たせしました」  久川が片倉を車内に残してから20分程が経っただろうか。  2人分のバーガーとフライドポテト、それに、シェイクの入った容器の入った大きな紙袋を持って、久川が車へ帰ってきた。 「ちょっとレジが混んでいて……やっぱり、いつもより長いゴールデンウィークですね。実家へ帰っていく人もいるんでしょう」 「そう、ですね」 「暑くはなかったですか?」  久川は一旦、紙袋を片倉に預けると、車の運転席へ乗り込んだ。  今は止んでいるが、ここ数日間は雨が降っていて、気温が高くないのと、サービスエリアが山に囲まれているという事もあるのだろう。  カーエアコンをつけるまではないものの、久川の質問とは真逆で肌寒い感じがするくらいだった。 「大丈夫です」 「良かった。じゃ、まずは食べましょうか」  車のダッシュボードを久川が片倉に断って開ける。車検証等と一緒に赤い手帳のようなものが載せてあり、ウェットティッシュの入った箱が傍らにあった。久川は2枚、ティッシュを引き抜くと、その1枚を片倉へ渡した。 「ありがとうございます」 「いえいえ。あ、これ、先生のです」  片倉は久川から紙袋を受け取ると、袋の口を開け、バーガーの包みを開いた。ハンバーグやチーズ、トマト、バンズといったものに齧りついて、ストローでシェイクを吸い上げる。そんな飲食物を咀嚼する音や嚥下する音が車内に静かに響く。  もし、これが教師と父兄の間柄ではなく、友人だったら、何の不思議もない行動だっただろう。教師と父兄の間柄ではなく、恋人だったら……昨日の事も同意ではなかったとは言え、何の不思議もなかった行動だっただろう。 「こんな風に何でもない事をするのって少し憧れたんですよね」  久川はバーガーを早々に食べ終えると、片倉が大きな身体でポテトを口に運ぶのを眺める。丁寧に咀嚼を重ねていた片倉は気恥ずかしくなると、申し訳程度のポテトを飲み込むように食べた。 「そんなに急がなくても良かったのに……じゃあ、行きましょうか」  久川は片倉にペーパータオルを差し出すと、サービスエリアを出て、山中のホテルへと車を走らせた。

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