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第8話

 ラのつくホテル『ドリームキャッスル』。  レトロと言えば聞こえは良いものの、2つ前の元号がぴったりと合うような城型の建物だった。久川はゆっくりと駐車場へ続くカーテンを潜って、駐車する。 「見た目はボロいけど、お風呂とかベッドとかは綺麗だと思うから。あ、先生は被っても、ちょっと女性には見えそうにないですね」  久川は誰かに見つかった時に面倒を避ける為に女もののウィッグを被る。久川の職場とする写真館に置いてあるものなのだろうか、と片倉は場違いに納得する。あとは、シャープで、骨の輪郭がはっきりとしている顎を隠す為なのか、大きめのマスクをする。すると、男性的な顔立ちは程よく緩和されて、片倉は少し驚いた。 「さぁ、行きましょう」  久川に促される。傍から見ると、大柄の男と女性にしては長身の人物がホテルへ入っていく。片倉は久川の代わりにパネル上にランプの点いている部屋を選択して、その部屋に入っていた。 「パネル、ありがとうございます。じゃあ、俺はお湯を溜めてきますね」  寛いでいてください、とウィッグを外しながら久川に言われ、片倉は部屋を眺める。広めの部屋にテレビがあり、小型の冷蔵庫がある。ベッドは大人が2人や3人乗っても、大丈夫そうだ。それに、久川が言っていた通り、ベッドカバーやシーツは綺麗に洗濯されているようだった。

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