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第9話(R18)
「健人さん」
私から俺に続き、片倉先生、ではなく、名前で。
久川に艶めかしく呼ばれると、すでに風呂に入り、身体にホテルのボディソープを纏わせていた片倉はドキリとした。
昨日、久川に薬を盛られて唇を奪われた時と言い、今日、車の助手席で言葉を交わした時と言い、久川の顔の作りは優しくて、美しいと片倉は感じていた。
だが、そんな風に思っていたのは片倉ばかりではなかった。
「健人さんは綺麗ですね。さっぱりとした黒髪に、少し彫りが深いのかな? はっきりした顔。胸も堅そうなのに、しなやかさもある。本当に美しい」
久川の指に広い胸板を曝されると、片倉は大胸筋を上部、下部、外側や内側に至るまで余すところなく触れられる。よく鍛えられていて、人目に触れても、恥ずかしくない体格だとは思うが、片倉の頭の中は羞恥で熱く焼かれていく。
「あぁ、アぁ……」
特段、久川がいやらしい触れ方をしているという訳ではないものの、殆ど愛撫など受けた事のない肉体は譫言のように喘ぐ。おそらく、初めて男と関係を持つ少女でもこんなに純な反応はしないだろう。久川は簡単に陥落してしまった片倉を見逃さなかった。
「嬉しい。昨日は眠っていたから少し喘いでいただけだったけど、こんなに初々しくて、可愛いなんて」
「いぁ……いわ、ないれ……いわない、でくだ……さい」
快感に支配されつつ、眉を曲げ、弱々しく呟く片倉を他所に。
久川の愛撫は指のみから唇でキスを落とし、舌で嘗めまわすものになる。性器も擦りつけていき、そのあまりの生々しさに片倉は堪らず久川の名を呼ぶ。
「うぅ、ひさ、かぁ。ひしゃかわ、さあ」
「港、って呼んでください。あの子と……娘と同じ呼び方になるので」
片倉とは違い、熱っぽいながらも冷静な声で、久川は言う。
『娘』。
という単語に一瞬だけ子猫のようにやや吊り上った大きな目と長い髪を持つ小柄な女の子の姿が思い浮かぶ。目の前にいる男と娘である彼女はあまり似てはいなかった。だが、自分は教師であり、彼女の担任で、目の前の男はその父兄なのだ、と思い至る。
「あぅ、ひっ。ひっ」
「港、です。健人さん」
「みな、とさぁ。み、なと、さんっ」
倫理を破って犯して、身体を犯されているという事実も突きつけられて、片倉の身体はますます熱に浮かされたようになっていった。
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