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第14話

 6月は5月とは違い、イベントらしきものは少なかった。  だが、祝日もなく、淡々と過ぎていく。普通に考えると、教師である片倉が父兄である久川と会うなんて事は灯英が学校生活を送る上で何か問題がなければ、そうそうない筈なのだ。  ただ…… 「なんで、こんな気持ち……」  片倉はいよいよ自分の気持ちが分からなくなり、ふっと浴室の天井を見つめる。1週間の仕事が終わり、明日、明後日は新任研修や急いでするようなテスト作りや採点といった仕事もなく、完全なオフだった。 「あの人に会えないのが残念なんて……」  下手をすると、久川に会いたい、会いたくてどうにかなりそうとさえ思う気持ちに。  片倉はますます分からなくなると、浴槽からゆっくりと上がり、しっかりとした手つきで身体を洗う。シャワーで髪を洗い、顔をもう1度、洗うと、シャワーを止めた。 「極力、会わない方が良い筈なんだ。このまま……」  片倉は久川が褒めてくれた、さっぱりとした短髪や筋肉で覆われた身体から水気を拭くと、服を着る。最近は忙しすぎて、というよりも無理に忙しいように振舞って、久川の事を考えないようにしていた。  片倉健人が久川港を愛すること。  それは正しくない事で、世間的にも許されない事なのだから。 「たまには掃除とかしようか。道具とかも買って」  思えば、掃除も掃除機はかけるものの、部屋を借りてから窓を拭いたり、埃を落としたりとした事はなく、洗面台の棚も薄っすらとした埃が積もっていた。

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