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第17話

「1回、健人さんには俺の仕事振りを見てもらいたかったんですよね。あと、健人さんを被写体にして健人さんを撮ってみたかった」  うっとりとレンズ越しに片倉を捕らえた久川は呟く。  『臨時休館』の札を下げた、ベージュやブラウンを基調としたレトロな感じのする久川写真館。そこには久川と片倉しかいなくて、片倉はホームセンターに着て行ったジャージからフラメンコ風のシャツとパンツに着替えていた。 「ぴっちりした服だから健人さんの身体のラインが凄い分かりますね。とても綺麗。美しいです」  嬉々として1枚、2枚とシャッターを押す久川に、片倉は居たたまれなくなる。元々、小学校の教諭には似合わずやや強面な事もあり、意図して笑顔を作ったり、写真に写ったりしたりする事が苦手だった。しかも、嘗めるような視線を向ける久川に、裸体を視姦されるくらいの羞恥も煽られた。 「もう、やめてください……」 「ふふ、凄くそそられる顔をしているのに。写真は苦手ですか?」  片倉の表情や肉体美を褒めちぎりながらパシャパシャと手際良くシャッターを押していた久川の手が一瞬、止まる。だが、それは写真を撮るのを止める為ではない。 「今のままでも凄く素敵なんですけど、ちょっと乱れたのも欲しいので、もう少し撮りましょう」  久川の指が片倉のシャツのボタンをはずして、壁紙やソファの種類なんかを変えながら撮影は進んでいく。そして、ちょっと乱れたのも欲しい、と言いながら、ちょっと乱れたとは逸脱して、パンツにも久川の手が伸びる。

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