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第22話

「今日はこの近くの学校まで写真を届けていて、帰りにたまたまセンターの横を通りかかったら、片倉先生を見つけて」  久川はカーエアコンを片倉が暑くないように調整すると、車のハンドルを握る。その車の助手席に片倉はまたシートベルトをして、座っていた。 「そうだったんですか……」 「ってすみません、先生がお困りだったようなので、つい割って入っちゃいましたけど、余計なことをしてしまいましたか?」 「いえ、上手く断り切れなくて、行くしかないかなと思っていたので。助かりました」  片倉は何とか、久川の問いに答える。すると、会話がなく気まずくなった車内で久川が溜息を吐いた。 「さっきの人、石川先生でしたっけ? 少し気をつけた方が良いかも知れませんね」 「え?」 「俺が『言うな』って話ですけど、あの人、先生のこと、特別な目で見ているような気がするんです」 「特別な……目、ですか?」 「好意的に見ているような気もするし、それでいて、あまり良く思われていないというか……先生を疎んでいるような感じにもとれました。まぁ、気のせいかも知れませんが……」  珍しく歯切れの悪い久川の言葉に、片倉も似たような感じがしていた。 「好意的に見られている……っていうのは分からないんですけど、確かに彼はとても目立つし、いつも沢山の人に囲まれているので、常に自分が中心にいて、思う通りじゃないと気が済まないみたいなところはあるかも知れませんね」  多分、そこの部分が無意識に感じられていて、片倉は石川が苦手なのだと思い至った。 「……本当にそれだけなら良いんですが」  久川はまだ何かが引っかかるようだったが、話をそこで切った。 「今日は先生はもう学校へは戻らなくて良いんですよね?」  学校へ戻らないといけないのであれば、学校の方へ向かいますけど、と久川は車を走らせる。 「はい、今日は残業をするなってことになっていて……あとは、家に帰るだけで……」  本当は久川にも石川に対応したように、仕事を口実にして、新谷小学校まで送ってもらった方が良かったのだろう。  ただ、この日に限って言えば、久川は片倉が困っていたところを助けてくれたのだ。片倉としては嘘を吐くのはあまりに誠意を欠いた言い訳のような気がしていた。 「そう、なんですね。じゃあ、家までお送りしましょう。確かこの道を右に曲がった方が近いですよね」 「えっ……」

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