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第41話(R15)

「アアアアぁ!!」  久川に手酷く抱かれ、片倉は神経が焼き切れるくらい、精も魂も尽きてしまうくらい感じて、果ててしまった。  もう限界を越えてしまった片倉がベッドへ横たわっていると、 「ごめんね」  と久川が呟く。  以前、光臣と出会った時も同じように抱かれたが、久川が荒々しいのは片倉を抱き潰すまでで、それ以降は弱々しく、片倉の身体を清めていた。  片倉としては病んではいるかも知れないが、哀しいや苦しいよりも嬉しいという気持ちの方が近くてしっくりしていた。 「大切にしたいんだけど、恋をすると、こんなにも相手を滅茶苦茶にしてしまうんだね。波英(なみえ)さんにでさえそんな感情を抱いたことはなかったのに……」  久川の唇から零れた女性の名前に片倉はどきっとしながらも、先程の無体な快楽に疲れ切り、目すら開かない。  幸か不幸か、それは普段、久川から聞きたくても聞けない久川の妻らしき女性の話だった。 「波英さんとは利害が一致して、結婚したんだけど、彼女との子どもができれば、家族として愛せると思ってた。……恋人や奥さんとしては難しくても、家族としてなら」 目蓋を閉じている片倉は意識がないと思っている久川はひとりごとを呟いていく。 「貴方にはまだ話せてないけど、波英さんもカメラマンで……あ、でも、俺なんかとは違って、世界的に認められている写真家だったんだ。でも、ある日、音信不通になってしまった」 『音信不通に……』と呟いてしまいそうになるのを片倉はグッと耐えると、耳だけ、聴覚だけに神経を集中させる。 「最後に葉書が送られてきたのが4年前で、あの子が5歳になっても、6歳になっても、4歳の誕生日からは何も送られてくることはなかった」  久川はできるだけ静かに、ベッドに横たわる片倉の黒い髪を梳くようにひと撫でした。 「夏英さんも俺も最後に彼女がいたと思われるイギリスへ何度も足を運んで、彼女を探していたんだけど、やっと彼女らしい人を知っている人から連絡をもらうことができた」  久川の指が片倉の黒髪から離れていく。久川がそれ以上に何かを言わなくても、片倉には分かる。  波英さんに、彼女に会いに英国へ行くのだと。

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