23 / 221

第24話

 確かに、学校では同性愛は珍しく無い。しかし、それは精神を重んじるものだった。どちらかと言えば尊敬とか敬愛とかの感情の交流で満足している生徒が多い。女子部は別の場所に有るので男子部は、実質男子校だった。その為か噂をされている生徒達は居たが、肉体的な関係を持つ者は稀だという話だ。 「ああ、初めて話した時から彼に興味を抱いた。そして今日の園遊会では二人きりになりたかった。彼が令嬢達に囲まれているのを見て、独占したいという気持ちが起こった。遠くから眺めて居ても彼の姿だけははっきりと意識していた。二人きりになった時、すんでの所で抱き締めたく思った」  思いつくままに語ったので時系列がばらばらな事に自分でも苦笑する。三條もその事に気付いたのだろう、少し頬を弛めた。 「そう感じたのなら、僕は真実お前が片桐君に惚れているという事だろうな…しかし、」  そう言って表情が厳しくなった。しかし、の次に来る言葉は予測が付く。先に言う。 「家族の問題…・・・だな」 「そうだ。今日の加藤侯爵や夫人の態度も僕は間近で拝見していたが、矢張り片桐君の存在は許せないと言った感じだった」 「そうか……彼も言っていた。『オレの家族もああいう態度を取るだろう』と」 「御家族に知られたら、大変だろうと僕も思う。その点は熟慮を要するな。ただ、僕はお前や片桐君の味方だから、信頼して呉れて構わない。」  そう言って微笑んだ。 「片桐君と話してみて、彼のことが今まで以上に気になった。僕で協力出来ることが有れば、何でも言ってくれ。」 「恩に着る」  感謝の言葉を述べる。 「お前がそうやって、片桐君や、彼の家の事を知るだけでもいい経験にもなると思う、だから全面的に協力する」  礼の言葉が見つからないので頭を下げた。 「親友の悩みを聞いているだけだ。お前が納得するまで僕は片桐君の件に付き合う」  真摯な表情でそう言った。  思慮深い顔をして三條は続ける。 「今日の園遊会での様子を見ていただろう。片桐君は、これまでああいう席に出席することは稀だったから令嬢方も気に留めては無かったようだがこれからは御招待の話も増えると思う。彼の容貌からして当然の事だろうが。片桐家の因縁に囚われている人間も居るが、今となっては気にしない人間も多い。片桐君には社交を広げる良い機会を作ってやったと僕は思う。彼はもっと社交に出るべきだ」 「それは……確かに正論だが……俺としては複雑だ」  片桐の世界が広がるというのは歓迎すべきことだとは思ったが、特定の令嬢が出来るというのは我慢出来ないことだった。

ともだちにシェアしよう!