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第42話(第2章)

 その熱を直接感じたい。そう切実に思った。そっと唇を離し、身体も少し離す。彼はじっとしていた。屈み込んで彼の胸の辺りに耳を当てた。片桐の両腕は自分の頭を抱えている。 「お前の心臓の音が聞こえる。制服越しではなくて、直接感じたい」  訴えるように言うと、片桐の鼓動が一層強くなった。確かめるように彼の顔を見上げると、濡れて赤みを増した唇が躊躇いながら動いた。目は閉じている。 「ああ、オレも……感じたかった」  瞳を開けた。涙で潤んだ瞳に魅入られた。下睫毛に一粒ダイアのような雫が有った。それをそっと唇で掬う。頭に回された手の力が強くなった。 「その扉の向こうが、寝室……だ」  見つめ合った瞳が外され、動いた。 「後悔は、しないか」  確かめるように言った。何よりも彼の意思を尊重したい。  揺るぎない瞳で、強く頷くと。片桐は少し身体を起こして、自分の左手を握った。  手を繋いだまま、寝室に向かう。些か覚束ない足取りだったが、彼の決意は伝わってきた。 寝室に続く道が遠く感じた。  左手で扉を開けると、彼も中に入って来た。唇を重ねた。唾液のせいでさっきよりも濡れた感触が欲情をそそられる。少し震えながら制服の釦を外し始める。すると、彼も同じく自分の釦《ボタン》を外してくれた。やはり震えながら。  上半身を生まれたままの姿にして、革のベルトを外した。白い裸体が艶かしい。片桐の方は、指が震えているせいで、まだシャツの釦に取り掛かっていた。その指を引き寄せ、口付けた。羞恥のせいか頬が上気している。  その顔に微笑みを見せ、自分の着衣を解いた。  そして、寝台に優しく誘った。  お互いに震える唇を重ね合い、静かに舌を絡ませた。甘く温かい口腔を貪る。左手は片桐の右の指にしっかりと絡ませ、右手は彼の背中を撫でる。制服越しでも肩甲骨の在り処は分かった。其処に触れた途端、彼の身体がひくりと跳ねた。お互いの身体の熱が分かった。鼓動が高い事も。  舌を夢中になって吸っていると、しっとりと濡れた片桐の指が強く自分の指を掴む。上を向けた片桐の顔が何か言いたそうだった。絡んだ舌を一旦解くと、彼の方から舌を絡ませた。そして、自分がしたのと同じように無心に吸ってきた。応じるように背中に回した手を肩甲骨の廻りを撫でる。

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