43 / 221

第44話(第2章)

 一瞬身体を震わせた片桐は、身体を強張らせた。暫くの間、背中を優しく撫でていると、覚悟を秘めた瞳で言った。 「…いい。…だが、その前に、頼みが有る。その扉の向こうが浴室だ。そこにバスタオルが有る筈…それをシィツの上に…敷いてくれないか」  彼の意図は分かったので、唇を一回強く吸ってから浴室に向かった。言われた物を持って戻って来ると、片桐はふらつきながら寝台を降りた。潤んだ瞳で自分の動作を見詰めている。寝台の下半分にバスタオルを敷いた。その間、片桐は唇に人差し指を当てて見ていた。 「これでいいのか」  彼の人差し指に、恭しく唇を当てて聞く。 「そう…だ」  人差し指が唇から離れ、直接唇が重なった。それを切っ掛けに寝台に横たえた。唇を重ねたまま。お互いの胸を重ねていると、肌に直接響く、幾分早い心臓の音が心地よい。もっと感じたくて身体をずらす。  すると、お互いの胸の尖りが触れ合った。その感触が快感を呼び起こす。片桐も、快感を感じているのだろう。ひくりと身体を揺らした。  唇を貪りながら、身体を上下させる。それを繰り返していると、桜色の胸の尖りが珊瑚玉のように固くなったのが分かった。  彼はうっとりと目を閉じている。時折、背中を掴んだ手が強くなる。胸を密着させて前後左右に動かしながら、彼の身体を少しだけ寝台から浮き上がらせ、肩甲骨の辺りに緩く爪を立てた。ビクビクと彼の身体が撓る。  その全てに劣情が刺激される。下半身の血液が一箇所に集まっているのが分かった。  彼はズボンを身につけている。それを下着ごと抜き去った。抵抗はない。彼の下半身に手を差し伸べると、半分育った彼自信に触れた。それをゆっくり上下に扱くと大きさを増していく。  重なった唇が、逃げて行った両の掌で上気した顔を覆う。羞恥心の成せるわざだろう。 そう思って、動かしていた手を二本に増やし包むように愛撫した。先端から水分の粒が零れてくる。触れている箇所が熱さを増している。  片桐は、右手の中指で自分の口を噛んだ。声を押し殺すためだと分かったので、ゆっくりとその指を取った。噛んでいた部分が紅くなっていた。そこに口付ける。 「う…っ…、あ…あっ」  唇から熱い吐息と共に音が洩れる。その声はかつて聞いたことのない艶を含んでいた。  頭の中の熱も一層煽られた。彼自身を包んだ手をより強く扱く。彼から分泌された液体のせいで手が滑らかに動いている。自分自身の劣情を吐露するよりも、あの声を聞いていたくて、一心に扱く。 「あ…も…う…っ、だ…っ」  眉間に皺を寄せ苦しげに喘ぐ。唇を重ねて声を奪うよりも、その時の…彼の声を聞いてみたかった。所在無い唇で彼の珊瑚色の尖りを舐めた。吸うと硬度が高くなった、色も濃さを増している。自分よりも少し細い身体の震えがひどくなった。 「か…加藤…もっ、だめ」  その切羽詰った声に、自分自身も昂ぶっていく。

ともだちにシェアしよう!