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第47話(第2章)
もっと奥まで触れ合いたい、そう切望した。しかし、粘膜が傷付く事も考えられる。
「動いて、いいか」
「い…い」
許可を貰ったが奥を突かず、先程彼が一番感じた辺りを突いた。その刹那、彼の身体が痙攣を起こしたかのように震えた。
「あ、晃彦っ、そこはっ、だ」
指の力が強くなった。だが、指も震えている。彼自身も立ち上がっていた。さらさらの髪の毛が枕の上を動く。
一気に奥まで貫くと、膝を立てていた彼の脚の筋肉が動き、もっと腰を浮かそうとする。その動きに誘われ、思うがままに蹂躙する。
「あ、あっあ…き…ひ…こ」
艶をはらんだその声により一層興奮が高まる。汗の粒が片桐の肢体に散らばった。
もう幾らも保たない――そう思った時、彼自身に右手を添え、上下に扱いた。
彼とは、内臓ではなく魂で結びついているかのように思える。そう思った瞬間、掌に熱い迸りを感じた。自分も彼の中に欲情を放った。彼の魂に届く事を祈りながら。
弛緩した身体を片桐の肢体に重ねた。お互いの汗がこの場合は不快ではなく、むしろ満足だった。
額に張り付いた髪を撫で上げると、片桐は満ち足りた顔をしていた。そのまま指で髪の毛を梳く。左手は彼の顔の輪郭をなぞった。その動作に片桐は、心地良さそうに身を委ねてくる。唇を重ねる。しっとりとした口付けの後。
「夢のようだ」
そう彼は呟いた。
「夢…?」
「ああ、オレが見ていた夢」
独り言のように呟く。彼は自分の熱意にほだされたのではなかったのか…と疑問に思った。
「いつから、そんな夢を見ていた」
掠れた声で聞いた。
片桐は、しなやかな肢体を自分に凭れ掛けていた。顔だけを見詰める。瞳が回顧するようにぼんやりとしていた。
「初めて晃彦に会った時は勿論憎悪しか感じなかった。それはあきひ…いや、加藤も同じだろう…」
「晃彦でいい」
照れくさそうにする彼に、幾分水分を含んだ髪の毛を梳いた。気持ちがいいらしい。目を細めた。
「それからずっと目で追っていた。憎しみの気持ちから…な。気付かれないようにそっと。その内に気付いた。晃彦は、オレを除くかつての賊軍の子孫にも分け隔てなく快活に接している事を」
汗が引いて来て、五月とはいえ、些か肌寒い。布団を掛けてやろうとしたが、自分の手と、バスタオルがどういう状態になっているかを自覚して、ただ、抱き締めた。お互いの体温を感じると、身体だけではなく心も温まって来る。
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