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第59話(第2章)

「ああ、大切な事をお前に伝えるのを忘れて居た。三條家は今上陛下と姻戚関係に有る。そのせいで、絢子様も園遊会には招待申し上げている。もうそれは決定事項だ。その事は含んで置いてくれ」 「……ああ」  矢張り絢子様が片桐に御懸想遊ばされて居るのであれば、自分は我慢出来るのだろうか…。そう自問自答する。片桐の気持ちは昨日聞いたが、絢子様の御気持ちは分からない。   今上陛下の御意向ともなれば片桐家も拒む事は許されない。それも気掛かりだった。居ても立っても居られなくなった。三條との話しを打ち切って、学校を後にする。片桐の屋敷に行く積もりだった。昨夜は無理をさせてしまったので、彼の体調も気に掛かる。  屋敷に着くと、華子嬢が直々に迎えてくれた。彼女とは話をしたかったが、それよりも片桐と話をしたくて、彼の部屋に向かった。使用人達は居たが、華子嬢が片桐の部屋まで案内してくれた。  扉の前で声を掛けていると、華子が耳元で囁く。 「わたくしが使用人を近づけませんので、お茶はお出し出来ませんが許して下さいませ」  そう微笑んで去って行った。  片桐の部屋に入ると、彼はとても嬉しそうな顔をしている。その笑顔に魅入られて接吻をした。彼も素直に身を任して来る。 「昨夜は無理をさせて済まない。内部の傷の具合はどうだ」  真剣な声で囁く。 「もう、大丈夫だ」  明るく微笑んで言った。しかし、彼の強情さは良く知っている。額面通り受け取る事は出来ない。それに、昨日の片桐の怪我が一日で治るものではない位、素人でも分かる。 「俺が原因の怪我だ。確かめたい。其れに他の人間には見せられない場所だろう」  片桐の顔が羞恥に染まった。暫く躊躇していたが、ほとんど聞き取れない声で囁いた。 「確かめて…欲しい」  手を握ったまま、彼の寝室に入った。寝台の横のナイトテエブルには、昨日塗布した薬がポツンと置かれていた。片桐が自分で、制服のベルトを引き抜く。その手をそっと押さえて、強く抱き締めた後、彼の下半身を露わにした。彼は頬を染めたまま、されるがままになっていた。

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