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第125話(第5章)

 まずは、華子嬢からの手紙を読んだ。 「兄は塞ぎ込んで居る様子です。使用人には気取られて居ないと思いますが、わたくしには分かりますわ。とても心配です。直接お目に掛かってお話し出来る様致します。近い内にお会い出来る様に取り計らう事が出来る事になりました。近日中にお会い出来ると思います。その時に詳しく申し上げます。絢子様にも申し上げる事が出来ました。かたじけなくも、御自身で協力出来る事は全てして下さるとお約束を戴きました。取り急ぎ」  彼女にも通学の時は御付の使用人が居ると推測される。どうやって自分と会う積もりなのかが書かれて居ないのは仕方の無いことではあるが、「近い内」とは何時なのか、それが気に掛かる。片桐の様子は一日千秋の思いで知りたかった。彼女は何時、何処で自分と会う積もりなのだろうか。具体的な事を知りたいという焦燥感は有ったが、それはこちらの都合でしかない。彼女の連絡を待つ必要が有る。  絢子様も行動を起こして下さるとの報告は有り難かった。彼女は先帝陛下の御息女でいらっしゃる。自分の両親や片桐家よりも上位に位置される御方だ。何とかして片桐の窮状を救って下さればいいのだが。  次に三條の手紙を開封した。 「今日は片桐君も欠席した。昨日は多分、お前に逢う為に登校したのだろう。しかし、お前が欠席したので、彼も登校する気力が無くなったのでは無いかと推測される。僕は片桐家に伺える立場の人間なので、今日にでも様子を見に行く積もりだ。まあ、華子嬢の顔を拝見したく思っているので、いい口実が出来た。僕は僕で片桐君の様子を伝えるから、お前はあまり心配するな。お前の屋敷に電話をしたら、『風邪で伏せっておりますので』とそっけなく切られて仕舞った。僕も要注意人物としてお前の家には思われているのだろうな。だから手紙しか手段が無い事を許して欲しい」  三條の手紙は有り難かった。しかし、矢張り三條と連絡を取るのは手紙しかない事に暗澹たる気持ちだった。手紙だと、時間差が生まれる。早く片桐の様子を知りたく思った。  夕食の時間になり、マサとシズさんが食事を運んできた。全く食欲が無かったが、礼を言って受け取り、マサの目を盗んでシズさんに皿の下を見るように目配せをした。  彼女は視線だけで分かったらしく、密かに微笑んだ。 「今日も1人で食べたいので、付き添いは無用だ」  マサに向かって高圧的な言葉を吐いた。  マサは気を悪くした様な態度を見せたが、言葉上は従順に承諾し、シズさんを連れて出て行った。  食事の皿はシズさんが下げに来るだろう。マサは内心立腹しているので姿を見せないに違いない。皿の下にシズさんの為に用意した心ばかりのお礼のお金を置いて置く事を決意していたので好都合だ。  味など全く分からない食事を済ませると、見計らったようにシズさん1人が皿を下げに来た。 「片桐家の御令嬢の様子は如何だった」

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