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第126話(第5章)

 一番の懸念を聞いた。 「昨日よりは明るい御様子でした。晃彦様もご心配遊ばされない様にとのご伝言を承りました」 「そうか。有り難う。皿の下の物は俺の気持ちだ。部屋を出てから飾り皿を見て欲しい」  そう言って彼女を下がらせた。今見てしまうと、彼女の事だ、断られる可能性が高い。 「承りました」  そう言って彼女は部屋から出て行った。  華子嬢の様子では何か進展が有った様だ。それが何かは分からないが、片桐にも良い方向に向かって居るのではないかと少々の安堵感を覚える。絢子様から有り難いお申し出でも有ったのだろうか。  しかし、片桐が欠席しているのは懸念される。彼は自分よりも真面目な性格だ。学校にも登校出来ない程、彼の心痛は深いのではないかと案じられる。  自分が自宅に軟禁されている今、全てを知っている三條に相談するのが、彼が取るべき最上の方法だと予測される。その気力すら無いという事なのではないかと思った。華子嬢は自分と片桐の関係を何処まで知っているのか分からないのだから。  それだけ、彼の気持ちは沈んでいるのだと思うと、とても気掛かりだった。  まだ、自分と片桐の道ならぬ関係を片桐家には知られて居ない。とすれば、片桐は家長代理としての仕事は残って居る筈なので、それだけをこなすのが精一杯なのだろう。  華子嬢に直接会って、彼の事を聞くしか無い。華子嬢はどうやって自分に会うつもりなのだろうかが分からなかったが、彼女が一番片桐の様子を知っている事は間違いが無い。  早く会いたいと切実に思った。  片桐が自分のせいでこれ以上苦しむのは見たくない。自分の見たいのは、彼の笑顔なのだから。  柳原伯爵のお屋敷に訪問する日が来た。母の話しによれば、御令嬢が学校を終えて御屋敷に戻られた時間に訪問して欲しいという要望だそうだ。  シズさんは華子嬢と三條の屋敷に文遣いに参っている時間だ。  気が進まないが、部屋着を学生服に着替え、外出の支度をする。気に入られない為には本人を褒めず、的外れな事を申し上げるしか考えられなかった。  自分の屋敷の車で柳原邸に向かった。  門番に運転手が来意を告げると、門が開き、玄関先まで車を乗り入れる事が出来た。自分の屋敷とは建築様式は違うがミルク色の外観に、茶色の屋根を付けたなかなか趣味の良い屋敷だった。  主人用の応接室に通される。  立ったまま暫く待っていると、柳原伯爵が悠然とした様子で現れた。 「君が加藤家の御子息かね。噂は聞いている。学業成績も人柄も申し分無い人だと聞いておる。実は、今日訪問して貰ったのは他でもない。娘にどうしてもと頼まれたのだ。 こちらで話して貰っても一向に構わないが、娘の部屋でゆっくりと話し給え」  ――御令嬢と二人きりになるという事は案の定、御見合いなのだろうか――

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