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第136話(第5章最終話)
「ええ、男子部では貴方がお休みになって、その後片桐さんがお休みという事しか噂にはなっておりませんわ。一部の例外を除いては、ですけど」
その言葉で理解した。
「三條ですか」
「その通りです。三條さんからもよしなにとのご伝言です」
彼の事だ。何も言わないで自分の為に手を打ってくれたのだろう。もちろん、未来の兄である片桐のことも心配だったに違いない。
「以前も申し上げました様にわたくしはあなた方の御味方をしましてよ。わたくしに出来る事は何かしら」
親身な御言葉に一瞬息が止まった。全てを申し上げようと決意する。
「実は私の両親が片桐家に抗議の手紙を出すと申しておりまして。そうなれば両家の確執からすれば争いは必至なのです。ですからやんごとなき御方に御仲裁賜りたく…」
絢子様は思慮深そうな瞳をされた。
「その御方とは、皇后陛下の事でございましょうか」
次の御言葉で、自分達の運命が決まる。失礼の無いように形の良い紅色の唇を眺めて、おもむろに申し上げた。
「その通りです。御不快も御有りかとは存じますが、絢子様にお願いするしか私には方法が見つかりませんでした」
御不快には違いない。かつては片桐を見初めた御方なのだから。下賎な言葉で言うと恋敵だった。
絢子様の次の御言葉で自分達の未来も変わる。掌に汗が滲むのを感じた。
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