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第182話(第7章)

「この部屋が一番安心出来る場所に成ってしまったみたいだ」  苦笑交じりに言うと片桐は眉間に皺を寄せ、顔を凝視して来る。書類を卓に置くと、立ち上がり自分の隣に座った。 「もしかして、頭痛もしているのではないか」  相変わらず、彼の観察眼は鋭い。  心配は掛けたくなかったので、冗談の積りで言って見た。 「ああ……している。お前が膝枕してくれたら治るかもな」 「そんな事で良いのか」  予想に反して彼は真面目に答えた。  彼は直ぐに立ち上がり、長椅子を指し示す。 「あそこに横になれば良い」  すると、その時扉を叩く音が聞こえた。  片桐が応じると先程命じた女中がお茶と御菓子を運んできた。 「ここは構わなくていいから、自分の仕事に戻って欲しい」  そう言って自分から扉を閉め、長椅子の端に腰を下ろした。 「靴を脱いで横になれば良い。頭は此処に」  どうやら本当に膝枕をして呉れる様だ。素直に靴を脱ぎ、彼の膝に頭を委ねた。二人とも制服を着ているが、夏服なので生地は薄い。彼の体温を頭で感じる。  彼の男にしては細い指が両方のこめかみの辺りを押して呉れた。  彼の指だと思うと尚更、心地よく感じた。暫く押し続けた片桐は手を止めた。 「どうだ、少しは治まったか」  口調に心配そうな色が混ざっている。彼の指圧のせいなのか、それとも体温を身近で感じたせいなのか、本当に頭痛が治っていた。 「ああ、もう頭痛はしない」  彼の目を見て言った。彼も自分が本当の事を言っていると分かったのだろう、心から安堵したように微笑した。 「しかし、もう少しこのままが良い」   感じている事を伝えると、片桐の微笑がますます深まった。  彼の両手がこめかみを離れ、頭に移動した。  以前、自分が彼にした様に細くて繊細な指が髪を梳き、その後頭皮を押して呉れる。  緩急を付けて指を動かされると、本当に気持ちが良かった。特に首の後ろは。 「以前、お前が言って居たが本当に気持ちの良い物なのだな」  心の底から感心した。 「ああ、晃彦にこうして貰って居た時に、絶対にしてやろうと思って居た」  唇を弛めて片桐が言う。  時折、指が耳の後ろに掛かる。そうすると性的な快感も同時に生じる。 「なあ、お前、耳の後ろを俺に触られた時、どんな気持ちだった」

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