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第193話(最終章)

「急ですが、7月の最終日曜日に開催するのが望ましいかと思います。招待客の殆どが学生ですので、日曜日が良いでしょう」  自分と片桐に確認を取る様な視線を送ってくる。 「そうだな。それが良いだろう。片桐に異存はないか」 「ああ、オレには異存はない」 「では決まりだな。早速、ホテルの支配人にその旨を伝える。船会社にも連絡を取って見る。華子さん、招待客に漏れはありませんか」 ノオトを見ていた華子嬢は、羅列してある御名前を見て、満足げに微笑んだ。 「御座いません。わたくしの知らない方は、加藤様や御兄様のお友達でしょうし。わたくしの親友の柳原さんが入っているのを嬉しく思いますわ」  彼女は多大な協力をして下さった。招待するのは当然の事だ。 「では、僕は絢子様の都合を今から侍従にでも電話して伺って来る。もう遅いのでそのまま辞去する事にする。大まかな人数だけ後で教えて貰えれば有り難い」  二人に向かって言葉を掛ける。 「これからは気兼ね無しに話せる様になって良かったな。お休み」  心の底から嬉しそうな表情で三條は部屋から出て行った。  華子嬢も三條と共に部屋から出て行った。少しでも話したいのだろうと思うと微笑ましいものを感じる。  二人きりに成ったので、先程から気に成って居た事を質問して見る事にした。 「……片桐は、家を継いで家長に成り妻を迎えるのか」  突然の質問に彼は目を見開いていたが、ふと瞳が暗くなった。 「そう言う晃彦はどうする積りなのだ」  逆に質問して来た。 「俺は、お前が傍に居てくれる限り、結婚はしない。家長としての務めの中に嫡子を残すことも含まれているが…、それだけはしない積りだ。俺の次の家長は弟の子供から出すようにする」  決意表明をしながら片桐の顔を見ていると、表情に明るさが序序に戻って来る。 「オレも同じ事を考えて居た。陛下から嫡子になるようにとの仰せで一番気に成ったのはその点だった。晃彦が妻を迎えたらどうしようかと思って居た。ずっと二人で生きて行きたいと思っている、だから晃彦が妻を迎えたらどうしようかと思っていた」  目を伏せて唇を右手でなぞりながら話す片桐を見ていると、睫毛の長さと華奢な指が目に入って来る。  自然に、触れ合いたいと思ってしまう。  まず、手首を優しく掴んで、指に口付けをした。片桐はなすがままになっている。目蓋にも口づけ、その後唇に接吻した。始めは唇だけ重ね合わせ、片桐が唇を弛めたのを良い事に、口付けを深めた。  歯列の裏、舌の裏などを舌で愛撫すると、気持ちが良さそうな顔をして居る。勢いづいて、執拗に愛撫すると、彼も同じ様に舌を動かした。徐々に快感が高まって来る。このまま、次に進みたいが、帰邸の時間も気に成る。  断腸の思いで接吻を中断した。

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