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 しばらくすると、海は時計の様子を調べ終えたようで、電話で田所に見積りの概算を伝えていた。修理の許可は下りたらしい。時計を毛布に包んで車まで運んでいった。 「やっぱり、ここですぐに修理をするっていうのは難しいんですか?」 「そうですね~、オーバーホールをするので、うちに一旦持ち帰らせていただこうかなと」 「オーバーホール?」 「内部の大掃除みたいなものです。あの時計は結構長くご使用されていたみたいですけど、オーバーホールをすればまだまだ使えると思いまして。結構お金がかかっちゃうので、人によっては新しい時計を買っちゃうって方もいらっしゃるんですけど……田所さんはこの時計をずっと使っていたいみたいですね」  玄関先で、時計を運び終えた海と話す。お金のやりとりは田所とすることになるので、彼との付き合いは、彼が修理を終えた時計を持ってくるその日で、終わりになるだろう。  これで一旦はお別れか――そんなことを思いつつ、少しばかりの名残惜しさを感じる。再会したときの彼の嬉しそうな表情を思い出してしまったのだ。 「あ、あの~、南丘さん……」 「ん?」  志鶴が迷っていると、海がもじもじとした様子で言葉を切り出した。 「部屋にあった段ボールって……引っ越しの荷物ですよね? よければ、片付け手伝いましょうか?」 「えっ」

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