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「ちょ、し、志鶴さん……」
「あ、これは嫌だった?」
「いや、じゃないですけど……ただ、その……」
「恥ずかしい?」
「……うう、」
甘い音をそっとたてながら、繰り返し髪の毛にキスをした。背中や後頭部を撫でたり、指先で耳たぶをこすったりしながら優しいキスを幾度となく降らせれば、海は耳を真っ赤に染めながらもぴったりとくっついてくる。もっとしてほしい、の意と受け取ってもよいだろう。
できれば、肌が見えているところにもキスをしたいが、それはさすがに拒否するだろうか。志鶴が海の境目を探るためにそっと彼の顎を持ち上げて顔を覗き込んでみれば、彼は瞳に熱を浮かべていた。目が合っても逃げる様子がなかったので、大丈夫そうだ、と判断し、額や瞼にもキスを落としてみる。
「気持ちいい?」
「……はい」
「うん。可愛い」
「し、志鶴さ――……あっ……!」
ちゅ、と耳にキスをした瞬間――海はバッと飛びのくようにして逃げてしまった。ここまで素直に身を委ねてくれていたのに急に拒絶されたので、志鶴は少しばかり焦ってしまう。間違えてしまったのだろうか。彼の嫌がることはしたくなかったので謝ろうとしたが……彼は、志鶴が考えていたものとは違う言葉を発した。
「あの、これ以上は……だめです。変な……気分になりそうになるので……」
「変な気分?」
「……だ、だから、……」
海は体を起こして、キスをされた耳を押さえながらふるふると震えている。暗がりでもわかるほどに、全身が真っ赤だ。
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