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「耳は嫌だった?」 「そ、そうじゃなくて……」 「……」  志鶴はそっと海に顔を寄せる。びく、と海は震えたが、志鶴がその頬に触れれば大人しくなった。視線を落とし、唇を噛み、ぎゅうっと自らの胸元で拳を作っている。ゆっくりと、頬に添えた手のひらを滑らせて、指先で耳に触れると、彼はくっと息を呑んだ。  もう一度、彼の耳に唇を寄せる。彼を抱きしめて、頭を撫でて、肩の力が抜けてきたところで、囁いた。 「嫌、じゃないんだよね?」 「……っ」 「もう一回、するよ。いい?」 「し、……志鶴さ、……――あっ……」  そっと、彼を押し倒す。そして、ちゅ、と甘く音をたてて、キスをした。そっと、何度も何度も。 「あっ……、あ、……ぁ、っ……ひっ、ん……」  海は志鶴の腕のなかでひくひくと震えながら、儚い声を零していた。ぎゅっと口元を手で押さえながら、脚をもじもじとすり合わせながら、志鶴の愛撫に反応するように鼻を抜けるような甲高い声をあげている。 「だ、だめです、志鶴さん……ぁっ……ぁひっ、……だめっ……」  そろりと太ももを彼の脚の間に入れて、く、と敏感なところを圧迫してやる。そのまま脚を使ってゆっくりと、ゆさゆさと彼を上下に揺さぶりながら耳を愛撫してやれば、彼はみるみるうちにその声色を濡れ(したた)らせていった。 「あっ、あっ、あっ……――ッ」  びくんっ、と海の体が震える。志鶴は一旦彼の体を刺激するのを中断して、そっと抱きしめてやった。はあ、はあ、と熱っぽく肩で息をする彼の首元に顔を埋め、そっと囁く。 「もっと“変な気分”になった?」 「……っ、志鶴さん、」  する、と服の上から彼の体に手のひらを這わせてゆく。そうすれば、海は「あ、あ……」と小さな声をあげながらひくんひくんと身じろいだ。甘やかされることに慣れていないこの体は、優しく触れられることにずいぶんと喜びを覚えてしまうらしい。 「海。セックスしたことある?」 「……っ、な、……何回、か……」 「じゃあ……きみに抱かれているときの女の子の顔、思い出して。きみに愛されて、いっぱい甘やかされて、気持ちよくなっている女の子の顔」 「な、なんっ……」 「――海もその女の子みたいになりたくない?」 「――……ッ」  海はぐっと黙り込むと、ふ、と体に熱を灯した。触れ合った部分が熱くて、熱がこもる。 「でも、僕は……男で……」 「俺の前では何も気取らなくていいよ。男らしさとかどうでもいい。俺の前では、裸でいていいから」 「……」  ずっと、ひとりで抱え込みすぎた少年。大人らしくあろうと、早々に自分の中のこどもを捨てて、甘え方がわからないままに成長してしまった。そんな彼の小さな背中が放っておけなくて、志鶴はぎゅっと彼を抱く腕に力を籠める。 「……志鶴さん」  海はかすれ声で志鶴の名を呼ぶ。  髪の毛にまとっているシャンプーの香りが、強くなった。彼が汗をかいているからだろうか。徐々に熱くなってゆくその体が、彼の中でふくれあがる期待を顕著にする。 「……して、ください」 「ん?」 「……僕の、体を……甘やかしてください」

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