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「はァっ……、はあ、……海、……大丈夫か」 「……、しづるさん……」 「海……」  海は自分の体を征服した志鶴を見つめ、とろんと瞳を蕩けさせた。何も考えられないのか、絶頂の余波の小さな快楽に、「ぁっ……んっ……」と小さく喘ぐばかりだ。唇が切なげに開かれていたので志鶴がかぶりつくようにキスをしてやれば、「んんっ……」と甘やかな声を漏らして悦んだ。 「可愛かったよ、海」 「……志鶴さん」  海の瞳が微かに涙に濡れている。志鶴はその涙を唇でぬぐってやると、そっと頭を撫でてやった。海は照れくさそうにへへっと笑って、志鶴の手のひらに自ら頭をぐりぐりと押し付ける。  少しは、心のこわばりがほどけただろうか。甘え方を覚えてくれただろうか。志鶴が顔を近づけて彼の瞳を覗き込めば、その瞳は細められる。そこからは、出逢ったときの、ちぐはぐな大人っぽさは感じられなかった。もう一度キスをすると、嬉しそうに笑ってぎゅっと抱き着いてくる。  もう一度、彼らしい「大人」を見つけてくれればいいのだけれど。ようやく本来の少年らしさを見せてくれた海に、志鶴は思う。しかし、こうして甘えてくれる彼を見ていると、そんな心配も少しずつ薄れていった。

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