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海は視界がちかちかするような感覚に見舞われて、へたりと座り込んでしまう。びくっ、びくっ、と体が震えて、ペニスからは白濁がはじけ飛ぶ。何が起こっているのかもわからず、惚けた顔で志鶴を見上げることしかできなかったが、その間にも体は昇りつめていって、やがて意思に反してイッてしまった。
触れられてもいないのに。ただ、彼と目が合っただけで、達してしまったのだ。
「……? ……?」
「海、立って」
「……はい……」
志鶴に手を取られて、震える脚で立ち上がる。正面から目が合うと腰が砕けてしまいそうで、ふらりとよろめいてしまった。
志鶴が初めて、「欲」のようなものを見せてきた。いつもよりもどことなく言動が粗暴になり、余裕がなく見える。じっと海を見つめるその目は熱を孕んでいて、射抜かれただけで何度でも絶頂してしまいそうになる。こんなことは初めてだったので、自分の体の変化に恐怖がなかったというわけでもないが、それ以上に無性に胸が高鳴った。「優しく甘やかしてくれる志鶴」ではなく、「志鶴」に抱かれたくて仕方なくなってくる。
「鏡に手を突いて」
「はい、志鶴さん……」
言われた通りに、鏡に手を突いた。特に言われてもいないが、自然と腰を志鶴に向かって突き出すようにして。
「ぁっ……あっ……!」
たまにする浴室でのセックスのために備えていたローションで、いりぐちを解された。今すぐにでも最奥を太いもので突き上げて欲しかったので、いりぐち付近だけをねちねちと弄られるともどかしくてたまらなかったが、それでも志鶴になかの肉壁を触られると感じてしまう。腰をガクガクとさせながらも、鏡を爪で掻くようにして、必死で立位を保つ。
「し、志鶴さん、はやく……はやく……! おねがいします、はやく、いれてください……」
「海――……」
海が耐え切れず懇願すると、ずるっと指を引き抜かれる。それだけで海は快感を覚えて、がくんと崩れ落ちそうになったが、その瞬間に志鶴にがしりと腰を掴まれた。
「あ……」
志鶴の体が、熱い。いつもよりもずっと熱く感じる。腰を鷲掴みする志鶴の手が熱くて、腰がじんじんと厚くなってゆく。
ぴた、と先端をいりぐちにあてられ、ゆっくりと彼の熱がはいってきた。熱くて、熱くて、なかが溶けてしまいそうだ。
「あぁっ、あぁあぁあッ――……‼」
「はぁッ、……」
まだ奥に到達していないというのに、全身を駆け抜けるようなすさまじい快感が襲い来る。彼の熱が――欲望が込められたこの灼熱に、海は過ぎるくらいに感じてしまっていた。初めて彼の心を少しだけ見えたような気がして、今までは慰めの行為でしかなかったこの行為が初めて「セックス」だと思えてきて、心臓がぎゅうっと締め付けられる。そして、それと同時に体の感度が限界まであがってゆく。
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