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言い切ってから、言いすぎてしまったような気がして、海はハッとしてしまう。彼に違和感を抱いていたのは事実だが、海のために何度でも抱いてくれていた彼に対して言う言葉ではないような気がしたのだ。そもそも彼との行為はセックスでもなんでもなく、海の心の傷を慰めるためだけの行為。彼からしてみれば、海の叫びなどお門違いもいいところだろう。それでも、本音を彼に伝えたいと思ってしまったのは――これ以上、彼と虚しい行為ができないくらいに、彼のことを好きになってしまったからだ。違和感を放っておけないくらいに、彼のことを好きになってしまった。
志鶴は海の言葉を聞くと、わずかに目を細めた。そして、「電池交換代、いくら」とだけ聞いてくる。その声色には明らかな怒気がこもっていて、思わず海は脚が竦んでしまった。
志鶴は海の手から腕時計を取ると、代わりにお金を握らせる。そして、海の目もみることなく、言い放った。
「……あれだけ善がっていたくせに、よく言うよ」
志鶴はそのまま背を向けて、店を出ていってしまった。海はその後ろ姿を見て、ふら、とショーケースに手を突く。
「……っ」
涙がぼろぼろとあふれてくる。
彼が怒って当然のことを言った自覚はある。それでも言わなければ気が済まなかった。何が正解だったのかがわからない。間違ったことを言ったつもりはない。彼に突き放されたのが、怖いくらいに哀しい。
様々な感情が一気に押し寄せてきて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。海は気付けば嗚咽をあげて、泣いてしまっていた。
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