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花乃がついた、1つの嘘

 日本は平和だけど、案外「死」というものは溢れている。事故だったり、自殺だったり、事件だったり、病気だったり。現実でも創作でも、しょっちゅう起こっている出来事だ。ただ、自分にとって身近ではない死には結構鈍感なだけで。それは、オレが冷たいからってワケじゃ、ないと思うんすよ。  だって、無関係な他人の事までいちいち気にしてたら、正直ノイローゼになって、人類はとっくの昔に滅んでいたと思う。それに人間の心っていうヤツは案外脆いから、誰もが平等に襲われるものだって頭では分かっていても、心が理解しない。自分や、自分に親しい人間は、ソレから遠いんだって思って、意識をしないようにして、自分を守っている。  オレも類に漏れず、そんな人間だった。  いくら花乃はオレを嫌っていても、オレは花乃が好きだったから。だから、オレと別れたあと、幸せに過ごしているもんだと思ってた。幸成や、他の友達とはしゃいで、相変わらず自分に尽くしてくる廉に苦笑を浮かべたりして。  そんな生活が、花乃には当たり前のように待っていると、意識することもなく思ってたのに。  でも花乃は死んでしまったらしい。それも、自分で命を絶って。なんで? なんで花乃は、自殺なんてしたんすか? もしかしたら、廉にも相談できないくらいには、 「花乃はオレが嫌いで、そこまで思いつめていたんすかねぇ……」  知らず、後悔と自分への怒りは声になっていた。  オレと付き合っている期間が、オレに愛を囁かれるのが、そこまで花乃を憂鬱にさせてしまっていたなら、せめて世間くらいは、オレを犯罪者として糾弾して欲しいものっす。しょせん、本人に出来なくなった償いの代わりを他人に求めてるだけっすけど。  オレの思考はどんどん落ちて行ったんだと思う。頭も心もからっぽで、どこか冷たいっていうのだけ、どうにかこうにか自覚できた。 「お前、知らなかったのか?」  そんなオレの心を現実に浮き上がらせたのは、幸成の声。でも、今更何も聞きたくなかった。他でもない幸成や廉に肯定されてしまったら、いよいよオレが花乃を殺したことになってしまう。  でも、幸成が続けた言葉は、あまりに意外で、 「花乃は、ずっと青斗の事が大好きだったんだよ」 「なにを……なにを言ってるんすか?」  頭で理解するより先に、そう返すだけで精一杯だった。だって、だって意味が分からないじゃないっすか。花乃は、あの日、オレに、 「花乃は、ずっと大嫌いだった、って言ったのに。ってか?」 「そうっすよ! アンタも知ってるんじゃないっすか。だったら、なんでそんな嘘を」 「嘘をついてるのはオレじゃない。ずっと大嫌いだった。それが、花乃のついた、嘘だったんだよ」

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