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生まれるはずのなかった子供

「どういう……こと、っすか」 「花乃の名字、知ってるだろ?」 「そりゃあ……知ってる、っすよ。嘘でも、花乃の同情でも、一応は…付き合ってたんすから」  オレがどうにか発した言葉に幸成が返したのは、花乃はどう思っていたにせよ、オレからすれば恋人だった男の名字を知ってるだろう、なんていう、おかしな言葉だった。  花乃の自殺。花乃の嘘。それだけでも十分すぎるくらいにパンク寸前なオレは、簡単な言葉を発するのも途切れ途切れになりながら、なんとか幸成に肯定を返す。 「ː宮都(みやと)でしょ?」  そうすれば、まるでオレが取り返しのつかない間違いでもしたみたいに、幸成は凄く渋い顔になって、それから小さく頷いた。 「それが答えだよ。花乃の嘘の理由。花乃が自殺した原因」 「なんで……。花乃の名字が、なんで関係あるんすか!?」 「花乃は……宮都花乃は、生まれるはずのなかった子供なんだ」 「なんすか、ソレ」 「宮都家は、本来、女しか生まれない家系だった。だから花乃は厄介者で、存在をひた隠しにされてたんだよ。このへんの学校を選んだのも、宮都と聞いてぴんと来る人間がいないからだ。青斗がそうだったみてぇにな」 「で、でも、幸成は知ってるじゃないっすか。それに、廉だって幼馴染なんでしょ? 花乃の存在を、花乃の実家が隠したいにしては、おかしいっすよ」 「オレは宮都とは、遠い親戚なんだよ。親戚付き合いのツテで、そういう情報を仕入れることができた。んで、廉のことは詳しくは知らない。でもまあ、他言無用を誓って、花乃といる事を許された、唯一の特例なんじゃねーか? だから廉も花乃と一緒にこっちの学校に来たワケだし、幼稚園から今まで、花乃と廉が別のクラスになったことはねぇんだ」  ごくごく普通の家に住んでいたオレには、あまりに別世界すぎて、理解ができない。それでも幸成の目は真剣そのもので、適当な話で真実を誤魔化そうとしているようには見えなかった。 「花乃は高校を卒業したらすぐに、結婚することになってた。嫁を取って、その嫁を宮都家の実子にする。花乃の家族はそう考えていた。でも、こうも考えていたんだ。花乃が恋人と別れないのなら、恋人である青斗は殺してしまえ、と。……で、それは更に飛躍した。秘密がバレる恐れがある。だからもしも別れても、その男は殺してしまおう、ってな。それを知った花乃は、こう思ったワケだ。“花乃の存在が世間にバレないように青斗を殺すというのなら、初めから花乃は居なかった事にしよう”ってな」

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