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「それなら、花乃は馬鹿っすよ」
頭がぐわんぐわんと揺れている。花乃が死んだっていうだけでも混乱したのに、その理由なんて、オレには及ばない、遠い世界の事だ。
家の事情? 生まれる筈のない子供? 厄介者? 昔の日本ならともかく、そんな事が今でもまかり通っていて良いんすか?
幸成の言葉は、オレにとって現実離れし過ぎていて、オレの事を憎んでいる花乃が幸成と結託してついた嘘だとか、せめて本当の自殺の理由を隠す事でオレの負担を軽くしようとしてくれているとか、そういう風に判断する方が遥かに現実的にも思えた。
多分オレの目は、そんな困難を、口に出すよりハッキリと伝えていたんだろう。幸成がそっと、どっか悲しそうに首を振る。
「全部本当の事だよ。オレの言葉じゃ信じられないなら、花乃の学校に行ってみると良い。宮都花乃は死んでいるし、それに伴って宮都の家から唯一の特例を許された廉も、姿を消してる。まあ、廉にとって花乃がいなくなった学校なんて、どうでも良いんだろーけどな」
「……そっすか」
幸成の言葉が本当なら、オレにとっても、もう、どうでも良い話だ。花乃が通っている学校で、花乃の席に花瓶が置かれていたって、花乃といつも一緒にいる廉が姿を消していたって、もう、オレにはどうでも良い。
「花乃は、お前と別れる事でお前が殺されずに済むなら、ってお前に別れを切り出すことを選んだ。肝心なトコで不器用だし、そもそも青斗に自分を嫌ってもらう事を目的にしてるからな。きっとアイツの選んだ言葉は、割とキツかっただろうし、お前を本当に傷付けただろうけど。青斗が殺されるくらいなら自分が死ぬ、そう決めて実行しちまえるヤツなんだよ、花乃は。だから花乃の好意だけは、信じてやってくれ」
本当、笑えてくるっすね。
幸成の言葉が本当なら、オレはやっぱり、花乃の気持ちを理解出来ちゃいなかった。これ以上花乃の負担にならないように、なんて、見当違いにも程があったっす。
オレは馬鹿だ。馬鹿で、結局花乃の気持ちを分かっていなかった、ダメな彼氏。
でもね。でも、花乃。
「オレを守るために自殺した? アンタの事が言っているのが本当なら、……それなら、花乃は馬鹿っすよ」
オレは花乃を殺してまで生きたいなんて思わない。そこまで、自分の生に執着はない。もしかしたら「それは若いから言えるだけだ」「なにも知らないガキだから」なんて、世間から否定される感情なのかもしれない。
それでも、オレにとって、花乃がいない人生なんて無価値で無意味なんだ。
本当、馬鹿っすよ。花乃。だって、アンタが助けてくれたオレは、アンタの気持ちを結局汲めなかった大馬鹿者なんだ。
「……花乃が助けてくれた命でも、こんな簡単に捨てちまえるのに」
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