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第5話

「いつ行くんだ?」 「今学期が終わったら、らしい」 「そっか。あと1か月もないのか」 涙を拭いて、夏樹はにこ、と笑った。泣いてばかりいては明希に心配をかけてしまう。 「……すまない、夏樹」 明希は申し訳なさそうに謝った。この件に関しては子供である明希にはどうにもできないことで、別に何も悪くはないのに。 「お前に、そんな顔をさせてしまうことになってしまって」 「……はは、笑ってるつもりだったんだけど、無理っぽい?」 こく、と明希は頷いた。自分ではいつも通り明るく振る舞っているつもりでも、はたから見るとそうではないらしい。 「ごめん、夏樹。」 明希はそう言うと、優しく夏樹を抱きしめた。夏樹の体温が体に伝わり、どことなく安心できた。同時に、またポロポロと涙が出てきた。我慢していたのに優しくされると耐えられなくなってしまう。 「オレの我儘聞いてくれたのも、最後かもしれないからだよな。ありがと」 例え明希にその気がなくても、夏樹にとっては貴重な思い出だ。今日してもらったことはきっとずっと忘れないだろう。 「他にはないか?」 明希は優しい。普段はツンとした態度で人当りもよくはない。放っておくと教室では孤立するような、そんなタイプの人間だ。それでも、明希は夏樹にとても優しい。甘やかされてるな、とは思っているが、あえてそれを有り難いと感じ、夏樹も明希に甘えている。 「……なに?言えばなんでもしてくれんの?」 もうそれもできなくなる。ただただ、辛い。明希はぎゅう、と抱き返した。 「えっちなことしてみたい。とか言ったらどうする?」 「……お前がそれを望むなら」 明希は少し距離をとってから、夏樹の唇に己を重ねた。長い長いキスだった。とても優しく、丁寧で、愛されていると勘違いしてしまうようなキスだった。刹那、するり、と服の下が捲られて、明希の手が腹を伝う。明希に直接触れられた箇所が熱く疼いてしまって仕方ない。 「明希さ、オレのこと甘やかしすぎでしょ」 「自覚はしている。」 明希が好きな夏樹にとってこれは夢のような一時だけど、夏樹は一体何を考えているのだろう。男同士なのだ、やはり、気持ち悪い、とか思っているのかもしれない。そんなことが脳裏をよぎったけれど、すぐにどこかに追いやった。自分は卑怯だな、とつくづく思う。明希の優しさを利用しているのだから、悪い奴だ。 「明希―、触り方がえろーい」 本当に初めて?と尋ねると、明希はむ、とした。当たり前だろう、と言いたいのだろう。 「えっちなことがしたいと言ったのはお前だ。」 ヘソにキスされ、明希の舌がその周囲に触れる。ぞくぞくする。下半身が限界なのは、多分明希にも気付かれているだろう。 「どうする?」 「何が?」 「それだ。」 夏樹の下半身を指さして明希は尋ねる。正直、本当にもう限界なのですぐにでも出してしまいたい。が、目の前には明希がいるし、ここは明希の家だし、なんだかそれは気が引ける。 「トイレ、借りようかな」 「出すってことだな、わかった」 わかった?聞き返そうとするとそれより前にズボンのチャックが下ろされた。手際よくボタンを外す明希にポカンとして、夏樹はその光景を見守るだけだ。そうこうしているうちに、我慢汁が先端からこぼれている夏樹のそれが姿を現した。 「処理する」 「は?え?!ちょ、あき……ッ!」 刹那、感じたことのない快感が全身を駆け抜けた。思わず声が漏れ出るくらいの快感で、何が起きているのかを理解するのに少し時間がかかってしまった。 「あ、あ……ッき、んッ……!」 あの明希が、夏樹のそれを咥えている。初めてされることなので上手い下手の判断はできないが、多分、上手いのではないだろうか。びく、びく、とすぐに体が小刻みに震えだした。絶頂がすぐそこまできている。 「だめ、でる……!」 こくん、と頷き、明希は更に奥まで咥えた。明希の口の中が熱い、なにより、とても気持ちいい。全身がびくん、と跳ねると同時に明希の口内へ己の欲を吐き出してしまった。力が抜けて、後ろへごろん、と寝転がった。ああ、天井が遠くに感じる。 「まずい」 「ああ、まずいんだ。それは知らなかった」 「味見するか?」 そう言うと、明希は夏樹に覆いかぶさり、唇を奪った。舌から伝わる精液の味が、まずい。 「あー、これは、まずいな」 はは、と夏樹は笑った。それをよくも平気で明希は飲み込んだな、と感心してしまう。後味はよくないみたいで明希は麦茶を一気に飲み干していたけれど。

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