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第12話

それはそうと、折角二人きりなのだ。夏樹はごほん、とわざとらしく咳払いした。 「あー……、明希、明希の力が大きすぎるけど、無事にオレは全科目へ平均点以上を取れた、よな?」 「そうだな」 明希には全ての解答用紙を開示しており、把握してもらっている。これも全て、あの約束を果たしてもらうためだ。 「約束、覚えてる?」 「ああ」 頷くと、明希は夏樹を下から覗き込んできた。綺麗な瞳には夏樹の姿が映っている。どくん、どくん、と心臓が高鳴り始める。 「どっちだ?」 「なに、が?」 ゆっくりと、明希が目前まで近付いてくる。すぐそこまで迫ってきて、夏樹は緊張で硬直してしまった。好きだなぁ、と改めて実感していると、明希はそっと夏樹の手を握った。 「したいのか、されたいのか、だ」 そんなこと、聞くか?! どくん、どくん、と鼓動の音が煩わしく鳴る。なんだか火が出そうなほど熱く、顔が真っ赤に火照っているのが分かる。ごくん、と唾を伸びこんで、えっと、と口を開く。 「されたい、かも」 「わかった」 そう言うと、明希が唇を重ねてきた。唇を触れ合わせるだけの軽いキス。それだけでも十分に緊張した。緊張して全身に力が入ってしまう。大好きな明希がすぐそこにいて、キスをしてくれているのだ。強張らない方がおかしい。 「夏樹」 空いている方の手で夏樹の頬に手を添えて、明希は優しく微笑んだ。普段無口なクールビューティーの微笑みはまさに明希のドストライク。好きという想いが強すぎて、逆に、目線を逸らせなくなり、ぼうっと明希の顔を眺めていた。 「夏樹、目、閉じろ」 「目?」 「いいから、言う通りにしておけ」 理由は分からないが、ここは明希に従うことにした。頷いて、夏樹は静かに目を閉じる。刹那、明希の親指が夏樹の顎に触れ、くい、と力を入れられたので自然と唇が開く。 「んっ……!」 一体どこでこんなテクニックを覚えたのだろう。その一瞬の隙をついて明希の舌が夏樹の中に侵入してきた。丁寧に、優しく舌を絡め、まるで味わうかのようなそれは、確実に夏樹の性感帯を刺激した。ぴちゃぴちゃ、と静寂した部屋に水音が響く。目を閉じているのでより一層感覚が敏感になって仕方ない。舌だけでなく、時折明希は歯茎に舌を這わせてくるが、それがまた気持ち良いところばかり狙ってくるのでたまらず声を上げてしまう。なんだかとんでもなく恥ずかしく、目を閉じておいてよかったと今は本気で思っている。 「夏樹」 「ん……なに?」 「苦しくないか?」 そう言って明希は夏樹の下半身の膨らみにそっと手を添えた。そりゃ、苦しいに決まっている。先ほどから下半身が疼いて仕方ない。試験中は自慰行為もあまりしておらず、性に関する行為は今日が久々なのだ。

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