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第24話
呼吸が乱れる。頭がおかしくなりそうだ、何も考えることができない。
「夏樹、深呼吸して」
「だって、なんか、変……」
すでに指は三本に増えていた。
痛みはない。代わりに、明希に中を弄られるたび、ぞくぞくと快感が全身を襲う。
明希は意地悪で、夏樹のいい所ばかりを刺激する。
おかげで一回出したというのに夏樹のペニスはすっかりたちあがっていた。
「あ、ああ……だめぇ、そこ、やっ……!」
明希が言うには、そこは前立腺とよばれる場所らしい。
前立腺を執拗に責められて、夏樹は思考を停止せざるを得なくなっていた。
「夏樹、可愛いな」
「言わない、で……ああっ」
「……ごめん、オレ、もう限界だ」
明希が弱音を吐いたのは初めてだった。
顔を覆っていた腕を外し、上体を起こして明希の下半身を見た。
ズボンごしだが、可愛そうなくらいに勃起しているのが見てとれた。
「明希、入れていいよ」
夏樹は再びベッドに背を預けると、明希に手を差し伸べた。
「まだ十分に解れていない」
「いい。そのくらい耐えられる。そんな明希を見てる方がオレは辛いよ」
「……」
明希は夏樹の手を取って、夏樹に覆いかぶさった。
唇に優しくキスをする明希の表情には余裕がなく、辛そうだ。宣言通り、本当に限界なのだろう。
「明希、おいで」
「……痛かったら、言ってくれ」
そう言うと、明希はズボンと下着を脱いだ。
尻孔に当たるそれの熱と質感に体が硬直してしまいそうになるが、身構えてしまったら明希が気持ち良くならない。
なるべく下半身の力を抜いて、いいよ、と再度明希を促した。
頷くと、明希はゆっくりとその孔へ自身を埋めていった。
「あ……は、ぁ、」
想像を超える質量に、夏樹は声を上げた。
上手く呼吸ができず、口を開けて必死に酸素を取り込んだ。
ずぶり、ずぶりと奥へ入ってくるそれは熱くて、固くて。
だけど、幸せだった。今夏樹は、確かに明希と繋がっている。その事実が嬉しかった。
「ん、う……あ、」
「大丈夫か、夏樹」
明希は額に汗を滲ませながら尋ねる。
頷くが、さっきから呼吸が上手くできず、息苦しい。
「夏樹、落ち着いて」
明希はそう言うと、夏樹の額にキスをした。
「呼吸落ち着けて。」
「あ、……明希……」
明希はそう言って、ぎゅっと抱きしめてくれた。
それだけでパニックになっていた気持ちが落ち着いてきた。
呼吸も通常に戻り、我に帰ってきた気がする。
夏樹が落ち着くまで明希は動かず、ただただ抱きしめ、待ってくれた。優しさが身に染みた。
「もう大丈夫。明希、ありがとう」
「そうか」
そう言うと明希は上体を起こし、夏樹の腰に手を当てた。
「動くぞ」
頷くと、明希はゆるりとピストン運動を開始した。
中が擦れ、痛みが走る。顔を歪めていると、夏樹、と名前を呼ばれた。
「大丈夫か?止めようか?」
「だめ、続けて、明希」
探るように腰を動かし、前立腺にペニスが押し当てられたときは思わず声を上げてしまった。
「ここか」
「あ、明希、だめぇっ!あっ、ああっ」
痛みに耐えていた声は徐々に色めいた声に変わっていった。
気付けば痛みなんて感じていなくて、突き上げるような快感だけが夏樹を襲った。
「ん、ぁ、ああっ、明希、あっ」
「夏樹、可愛い」
そう言うと明希は微笑んでみせた。
明希がこうして微笑むところなんて滅多に見ない。
その優しい笑顔にきゅんとして、無意識に明希を締め付けた。
「夏樹、しめるな、出る」
「んなこと、言われても、むりぃ……!」
「もう、オレも、」
ピストン運動が早くなり、奥を突かれるたびに自分でも聞いたことのない声が出てしまう。
だけど、恥ずかしいとかそんなことを感じている場合じゃなくて。全身を襲う快感に頭がおかしくなりそうで。
「夏樹、出る」
「あ、ああ、あ―――ッ!」
刹那、中に熱いものが注がれた。明希が達したようだ。
ずるり、と明希が自身を抜くと、後孔から白濁色の液体が零れた。
「明希、イッたの?」
「うん、すまない、お前はまだなのに」
そう言うと、明希は夏樹のペニスを口に含んだ。
夏樹も限界は近く、あっという間に達してしまった。
明希はそれを飲み込むと、夏樹の頭を優しく撫でた。
「ありがとう。お前と繋がれて、オレは嬉しい」
「明希……オレもだよ」
二人はそう言って、顔を見合わせ、笑った。
幸せだな、と思った。ずっとこの幸せが続けばいいのに、と。
「シーツ変えようか。その前に、後ろの処理をしないとな」
「え、処理?」
どうして明希は引っ越してしまうのか。置いていかないでほしい。ずっと一緒にいてほしい。
どんなにどう願っても、それは決して叶わないのだけれど。
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