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第25話
それ以降、お互いの部屋で二人きりになった時は体を重ねた。
明希と性交をするのは幸せで、ずっとこの時間が続けばいいのに、と思っていた。
「明希、いいよ、自分でやる!」
「遠慮するな。それに、そんなことさせたくない」
後処理も、恥ずかしいけれど明希がしっかりとしてくれた。
明希にきっとそういう気持ちはないのだけれど、中を掻き出されているというだけで感じてしまい、頭が変になりそうだった。
この幸せな時間も限られている。
そう思うと、いくら繋がっても足りなかった。
引越しの日が近づくたびに明希の部屋にはダンボールが増えていた。
少しずつ荷造りをしている様子だった。
それがなんだか寂しくて、見たくなくて。
「絶対連絡しろよ」
夏樹は明希に抱きついて、懇願した。
もうこうして明希に抱きつくことも、温もりを感じることもできなくなる。
そう思うと、自然に涙が零れてきた。
「夏樹、泣いてるのか?」
「泣いてるよ、寂しいんだよ」
「そうか」
そう言うと、明希は優しく抱きしめ返してくれた。
「オレも寂しい。必ず連絡を入れるから、待っていてくれ」
帰りたくない、帰したくない。
もっと一緒にいたい。そんな二人の想いは決して天には届かない。
時間は刻一刻と過ぎていくし、二人に残された時間も減っていく。
時は本当に残酷だと思う。
「うん」
手をつなぎ、抱き合い、口付けをして互いの存在を確かめ合う。
何度も、何度も、時間が許す限り。
そしてその日、明希はこの町を去っていった。
どれだけ泣いたのか分からない。
ご飯も喉を通らなくて、ずっと部屋に閉じこもっていた。
ずっとスマホを握りしめ、もういない恋人の存在をそこに探した。
泣き疲れてうとうとしたらしく、気付けば真夜中になっていた。
スマホが光っている。急いで確認すると、明希からのメッセージだった。
『遅くなってすまない。無事に着いたから連絡をした。一人にしてすまない、必ず戻るから』
「明希……」
時刻はついさっきの表示になっていた。
「バカだな、謝ってばっかり」
なんだかそのメッセージの真面目さに笑いが出てしまった。
なんて返事をしよう、そう考えていると、もう一通メッセージが届いた。
『オレはお前が好きだから。忘れないでほしい』
夏樹は笑みを漏らし、思いつくままにメッセージを送った。
少し長文になってしまったけれど、今の想いを綴ったらそんな長さになってしまった。
(大丈夫、明希は、戻ってくるから)
遠いけど、明希の存在を近くに感じることができる。
それはとても幸せなことだと思う。あと何年かかるか分からないけれど、明希がいつ戻ってきてもいいように、明希が失望しないような男にならなくては。
(頑張るよ、明希)
夏樹はスマホを握りしめ、そのままベッドに体を預けた。
今日は幸せな夢を見れそうだ。
それから毎日やりとりしたメッセージは、ある日、『ごめん』のメッセージを最後に途絶えてしまった。
こちらから送っても返事はなく、明希はその後、音信不通となってしまった。
それから、3年――
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